コンポーザーのAyase(27)、ボーカルのikura(21)からなる「小説を音楽にするユニット」YOASOBIが5日、武道館で初の有観客ライブ「NICE TO MEET YOU」の2日目公演を開催し、取材した。

今やCMなどを通じて、テレビで楽曲を聴かない日はないというくらい大人気ユニットだ。ライブは1日約7000人、2日間計約1万4000人を動員。ストリーミング総再生数が6億を突破した代表曲「夜に駆ける」や「群青」「三原色」など、1時間半で全15曲を披露した。

19年11月16日にデビュー曲「夜に駆ける」のミュージックビデオ(MV)を公開。ストリーミングなどで人気を徐々に獲得し、初の有観客ライブで武道館にたどり着いた。これまでは、CDデビューをし、その後武道館など夢の舞台を目指すことが“当たり前”とされてきた。だが、近年はその流れはあまり見受けられない。そして、結成から約2年で武道館にたどり着いた、このユニットのスピード感は“異例”だろう。

ライブの演出も細部までこだわっていた。アリーナ席を全て無くし、360度、どこからでも見られるようにステージを展開。武道館ライブの翌々日に出演したレギュラーラジオ「YOASOBIのオールナイトニッポンX(クロス)」では、こだわりを多く説明し、ギリギリまで粘った末にできた演出だったと説明した。二階席にも近づけるように、ステージには上下ムービングも取り入れた。

演出だけではなく、ライブパフォーマンスも圧巻だった。難易度の高い楽曲ばかりを作り、メディアで「鬼」など、いじられることが多いAyaseの楽曲を、ikuraは見事、歌い上げた。その様子をラジオでAyaseは、開始前までは不安が正直あったと明かしつつ「パーフェクトだった」と絶賛した。

結成時から「こういうライブがやりたいよね」と、熟考に熟考を重ねたという。普通なら、長く目指していたゴールテープを切り、燃え尽き症候群のようにもなりかねないが、ikuraは「ここからがスタート」と力を込めた。

「小説を音楽にするユニット」らしく、ikuraが曲間に朗読。いつでも写真撮影ありという近年、珍しい“サービス”。初日はAyaseがスマホで、2日目はikuraが自分のカメラで客席を記念撮影する自由さ。デビューからの活動や実績、今回のライブでの楽曲や演出。“常識”という枠にとらわれず、輝く2人がまぶしかった。

前例がないなら、作ればいい-。ライブを取材して、そんなメッセージを受け取った気がした。【佐藤勝亮】