小泉純一郎元首相や細川護熙元首相が顧問を務める原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(吉原毅会長)は3日、東日本大震災の原発事故で福島県内の子どもたちが甲状腺がんに苦しんでいるとする声明に対し、山口壮環境相が小泉、細川氏らに抗議文を出したことに反論した。

 小泉氏や細川氏、菅直人氏、鳩山由紀夫氏、村山富市氏ら5人の元首相は先月27日付で、欧州委員会委員長宛てにグリーン投資に原発エネルギーが含まれることに反対の声明を出し、原発事故で「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ、莫大な国富が消え去りました」と記していた。

 これに山口環境相は「福島県の子どもに放射線による健康被害が生じているという誤った情報を広め、いわれのない差別や偏見を助長することが懸念されます。福島県が実施している甲状腺検査により見つかった甲状腺がんについては、福島県の県民健康調査検討委員会やUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)などの専門家会議により、現時点では放射線の影響とは考えにくいという趣旨の評価がなされています」と元首相らに抗議文を送っていた。

 元首相らの意見を取りまとめていた原自連はこの日、山口環境相への抗議書兼質問書を発表。その中で「『多くの子どもたちが甲状腺がんに苦しみ』が誤った記載であると書かれていますが、これは真実です。福島原発事故前は、年間100万人に一人か二人の発病しかなかった小児甲状腺がんですが、事故から10年で、事故当時福島県内で18歳以下だった38万人の中で既に266名の発症が判明しています。その内222名が甲状腺摘出手術を受けています」と記した。

 そのうえで「桁違いの発症率を常識もしくは良識で判断すれば、福島原発事故との『因果関係あり』と考えざるを得ません。そうでないと主張する者は放射線被ばくではない別の原因を主張・立証しなければなりません。政府も東電も県もそのような主張立証を全くしていません」と続けた。

 自民党の高市早苗政調会長も元首相らの声明に「誤った情報に基づいて風評が広がる」と抗議の意思を表明していたが、原自連側は「放射能汚染や被ばくを認めたくないようですが、実際に被爆し病になっている人々がいるのです。そのことを知っていただくためにも議論が高まることを願っております」と訴えた。