いざ、復権へ。巨人・菅野智之投手(32)が5年連続で開幕投手を務めることが1日に正式決定した。通算8度目の大役は上原浩治氏を抜いて球団最多で、開幕戦5勝目を挙げれば球団新記録となる。昨季はたび重なる故障に見舞われて屈辱の6勝止まり。汚名返上、さらに本人が明言した「タイトル奪取」に向け、恩師でかつての正捕手から復活へのヒントが授けられた。

 初陣はこの男しかいなかった。大規模改装工事を終えた本拠地・東京ドームの内覧会が行われ、原辰徳監督(63)は「やはり菅野智之投手しかいない」と初めて明言。キャンプ地の沖縄から帰京する前には桑田投手チーフコーチが菅野本人に直接伝え、桑田コーチから報告を受けた原監督はエースと固い握手を交わしたという。

 菅野は順当としても「まず6人を決めることが大事」。今後の焦点はローテ構築となるが、背番号18にとっては特別なシーズンとなる。昨季は4度の抹消を経験するなど、エースとしては不本意なシーズンとなった。プロ入り後、初の減俸も食らい、自主トレでは指先の強化などに取り組み、春季キャンプも故障なく順調な調整で駆け抜けた。目標は高く、投球回は「200イニング」「最多勝と防御率のタイトル」「防御率は1点台」と公言するなどその覚悟は相当なものだ。

 そんなエースに、完全復活への糸口を与えたのが阿部慎之助作戦兼ディフェンスチーフコーチ(42)だ。昨季までは主に二軍監督を務め、ほぼ〝管轄外〟だった菅野について深く言及することはなかった。しかし、今季からは違う。かつての正捕手で菅野ともバッテリーも組んできた阿部コーチは改善点をこう指摘した。

「俺はとにかく彼はストレートだと思うんだよね。ストレートのコントロールさえ良ければ、また勝つと思う。みんな『菅野=スライダー』だと思っているじゃん。だからこそのストレートで。(昨季は)スライダーを投げてストレートを生かす、みたいになっちゃっているから。俺は逆だと思う。ストレートあってこその変化球だと思う」

 菅野の大きな武器の一つは曲がり幅もキレも抜群のスライダーではあることは疑いようもない。だが、その宝刀を最大限に生かすのは直球であり、磨きに磨きをかけた直球主体の投球こそが復活へのカギと見ている。

 阿部コーチは「去年のデータを見ても、あれだけすごい数の対戦をしているのに、右打者へのストレートでの見逃し三振は4つか5つしかなかった。あれだけのスライダーがあったら、もっとありそうだなと思ったんだけど」と物足りなさを感じたという。

 正式に開幕投手に決まった菅野は「本当に身が引き締まる思い。開幕戦は独特な雰囲気でなかなか慣れないものですけど、勝ちにこだわって、チームと自分自身も良いスタートを切れるように死に物狂いで投げたい」と決意表明。背番号18の逆襲がいよいよ始まる。