毎年の恒例となっている雑誌「ミュージカル」の「2021年ミュージカル・ベスト10」が最新号(3・4月号)で発表され、21年に初演された作品のベストテンでは劇団四季「アナと雪の女王」が1位に選ばれた。

19年「パリのアメリカ人」、20年「ロボット・イン・ザ・ガーデン」と3年連続で四季作品が1位に輝いた。初演、再演の作品、男優、女優、演出家の各部門に分かれ、演劇評論家、演劇ジャーナリストの20人が同誌のアンケートに答えた結果を集計したもので、私も参加した。

初演のベスト10は<1>アナと雪の女王<2>ニュージーズ<3>蜘蛛女のキス<4>フィスト・オブ・ノーススター<5>桜風記〓オリバー!<7>アリージャンス<8>ジェイミー<9>アナスタシア<10>ウェイトレスと並んだ。

「アナと雪の女王」の圧勝だった。2位の「ニュージーズ」に60ポイント以上の差をつけた。同名映画の舞台版で、日本では20年に初演予定も、コロナ禍で9カ月遅れの開幕だった。21年上演の舞台でもっとも楽しみにしていたが、「ありのままで」など聴いているだけでテンションがあがるナンバーに加え、雪と氷の世界を見事に再現した舞台は期待を裏切らなかった。

「ニュージーズ」も1年以上延期しての上演だったが、主演の京本大我は歌、ダンスともにレベルアップし、アンサンブルもキレッキレのダンスを見せてくれた。3位の「蜘蛛女のキス」はこれまでも何度か上演されているが、モリーナ役の石丸幹二、蜘蛛女役の安蘭けいの安定感、存在感が際立ち、石丸は男優部門、安蘭は女優部門でそれぞれ1位となった。

オリジナルでは、人気漫画「北斗の拳」をミュージカル化した「フィスト・オブ・ノーススター」は4位に食い込んだ。原作の世界感を損なうことなく、主演の元バレエダンサーの大貫勇輔も肉体改造を経てケンシロウに成り切った。

ちなみに私の投票は、初演が<1>アナと雪の女王<2>アナスタシア<3>ニュージーズだった。

再演部門では「レ・ミゼラブル」が堂々の1位で、石丸主演の「パレード」が2位となった。男優部門では「17AGAIN」で初めてミュージカルに挑戦した竹内涼真が4位に入り、女優部門では「ニュージーズ」「衛生」「GHOST」でヒロインを演じた元宝塚娘役トップの咲妃みゆが2位、「ウェイトレス」主演の高畑充希が3位に入った。

昨年12月に急死した神田沙也加さんは女優の6位に入った。ここ数年はベスト10の常連だった。いつかトップになっただろう神田さんのあまりに早い死は、ミュージカル界の損失でもある。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)