86年ぶり新関脇優勝の若隆景(27)、千秋楽まで賜杯争いに残った琴ノ若(24)、十両筆頭で10勝して返り入幕確実の王鵬(22)と、大相撲春場所では若手力士たちが活躍した。3人に共通するのは、力士だった父よりも番付が上になる祖父の血を、母親から受け継いだ「女系」の三世にあたることだ。

 初優勝を遂げた若隆景と幕内若元春、幕下若隆元の3兄弟は、祖父が昭和半ばの栃錦・若乃花時代まで活躍した元小結の若葉山。父の元若信夫も元幕下の力士だったが、若葉山の息子ではなく、その娘と結婚して若隆景ら子供をもうけた。

 初場所に横綱の孫対決として話題を呼んだ琴ノ若と王鵬。それぞれ祖父は琴桜、大鵬と綱を張った名力士で、優勝32回の大鵬は歴代最強レベルだった。父も琴ノ若、貴闘力と実績ある元関脇だが、両横綱の娘と結婚した婿殿で、祖父の〝DNA〟は母からということになる。

 相撲部屋を身内が継承する場合、息子が力士になるか、娘が力士と結婚する2通りのルートが主にある。二世とはいえ、息子が力士として年寄襲名の有資格者となるのは簡単ではない。それに対し、娘と有力な力士の縁組は継承の実現性が高い。琴ノ若と王鵬の父母のケースは、角界のホープを生んだと言える。

 大相撲は〝血縁〟に注目してみるのも面白い。