その用兵の意図は――。ソフトバンクは25日のDeNA戦(横浜)に8―2で快勝。試合前から相次いだ有事をはねのけた。打撃絶好調だった内野の要・今宮が新型コロナ濃厚接触疑いのため登録抹消されると、さらに先発・東浜が序盤2回に左くるぶし付近に打球を受けるアクシデント。右腕は痛みに耐えて続投したが、3回を投げ切ったところで降板となった。

 それでも東浜の後を受けた松本が4イニングを3安打1失点に抑える好救援で今季初勝利。打線も2―2で迎えた5回に、相手のミスに乗じて一挙6点を奪い試合を決めた。

 藤本博史監督(58)は、全員野球で窮地を跳ねのけたゲームのポイントをこう語った。「(4回の)バント失敗の後、牧原大がよく打ってくれた。あそこで倒れていたら嫌な流れになっていた」。1―1の4回無死一、二塁。犠打を試みた中村晃は併殺に倒れ、二死二塁と好機がしぼんだ。だが、続く牧原大成内野手(29)が左翼線に適時二塁打。開幕から指揮官が「ジョーカー」と呼んで重宝する男がまた輝きを放った。

 内外野を守れる牧原大は、鷹が誇るオールラウンドプレーヤー。この日は「6番・三塁」で3試合ぶりの先発出場だった。スタメン起用の試合に限れば、これで10戦連続安打。好調持続の裏には藤本流の「用兵」がある。

 牧原大は今宮の離脱で遊撃手の〝代役筆頭〟に挙がってもおかしくない守備力と経験を誇るが、指揮官はあえて候補から除外。そこにはこんな理由があった。「打撃の状態がいいだけに、牧原(大)をショートで考えたくない。(内野の要である遊撃だと)守備でいろいろ考えて打撃に影響すると困るから」。ただでさえ役回りが多い「何でも屋」。準備が増えたり、仕事がコロコロ変われば、安定したパフォーマンスを発揮するのは難しい。その希少性を買いつつ、今後も攻撃力を安定的に生かすための判断だった。

 今宮の復帰まで「おるメンバーでなんとかする」。今が腕の見せどころだ。