東京五輪男子90キロ級代表の向翔一郎(26=ALSOK)は〝原点回帰〟で再スタートを切る。

 東京五輪でメダルを逃した向は、4月3日の全日本選抜体重別選手権でまさかの初戦敗退。かつては異端児として名をはせていたが、近年は「自分がいい子にならなきゃって。畳の上ではいい子にならなくていいと思ったのに、どこかでそれが抜けなかったので、柔道が楽しくなかった」と本来のらしさを見失った。比例して結果も残せなくなり「柔道が楽しくないからやめたい」と思ったこともある。

 ただ「柔道が好き」という生粋な思いが向を突き動かした。同29日に行われた体重無差別で争われる全日本選手権は3回戦で小川雄勢(25=パーク24)に敗れたものの「今日は楽しくて、柔道を頑張ろうと思った」と一念発起。「最近は楽しく柔道をしている。キツいけど、自分がどうしたいとか、自分がどういう風にしたいのかと考えながら練習すると楽しいなって。まだ柔道を続けてもいいなと思えるようになってきた」と明るい表情が戻ってきた。

 世界選手権(10月、タシケント)の代表入りは逃したとはいえ、悲観する様子は一切なし。グランドスラム(GS)トビリシ大会を前に「しっかりと自分の柔道をすることだけ。気負わずにやりたい」ときっぱり。自分をさらけ出し、再び世界の舞台で躍動する。