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東京マハロが描く被災地の物語に、百瀬朔が挑む
2015年03月24日 16時15分 [演劇]
百瀬朔
百瀬朔

劇団「東京マハロ」第14回公演『たぶん世界を救えない』が、まもなく幕を開ける。脚本・演出を手がける主宰の矢島弘一が描くのは、東日本大震災後の原子力発電所近くに暮らす人々の物語。そのなかで、ある家族の高校生の息子を演じるのが百瀬朔だ。ドラマ『仮面ライダー鎧武』などで注目を集めている若手俳優に、意気込みを聞いた。

東京マハロ『たぶん世界を救えない』チケット情報

これまで舞台では、『タンブリングFINAL』や『曇天に笑う』など、同世代俳優と一緒に作り上げる作品が多かった百瀬。大人キャストに囲まれることも、シリアスなストレートプレイに挑むのも、初めてのことだ。「最初はどうしていいか全然わかりませんでした(苦笑)。でも、矢島さんが、そのままでいいよと僕自身を尊重した演出してくださったり、永井大さんをはじめとする周りのキャストの方々も、僕の芝居をそのまま受け止めてくださるので。僕はもうみなさんに委ねて、勝手に芝居をするぐらいの勢いでやらせていただいています」。

しかしそれでも、演じる高校生の春一は手ごわい役である。祖父は原発誘致を進めたひとり。ゆえに、原発事故も一族はこの切実な現実を受け入れながら生きていくしかない。そんな流されていく大人たちを、春一はひとりクールに見つめ、やがてそれでは何も解決しないと声を上げることになる。「前半はほとんどしゃべらないんです。だから、しゃべらないでそこにいるのってしんどいなと思いながら(笑)、大人たちを見ているんですけど。でも、そこでちゃんと見ておくからこそ、自分が話すときにもしっかり熱が入るというか。普通、大人に対して正面切ってものを言うことなんてないから、ものすごくパワーがいるんですけど、すごくやりがいのある役をやらせていただいているなと感じています」

さらに、春一は若年性アルツハイマー病を発症した父がいるという役で、演じるにあたっては、被災地の現状についてはもちろん、アルツハイマーのことも調べた。が、「調べたということに酔うことなく、フラットに演じたい」ときっぱり。「僕自身が感じたことを出すのではなく、大切なのは春一の意見や思いを出すことで…。僕たちがフラットに演じることによって、観てくださる方にも、こんな現状があるんだと、ただまっすぐ伝わるんじゃないかと思うんです」。伝えることの責任を背負いながら舞台に立とうとしている。この誠実な役者が見せてくれる、とある家族の現実。しっかりと受け止めたい。

公演は3月25日(水)から4月5日(日)まで東京・赤坂RED/THEATERにて。当日引換券も発売中。

取材・文:大内弓子

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