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劇団ならではの魅力とパワー! SET、年に一度の本公演まもなく開幕
2021年10月21日 11時01分 [演劇]
撮影:平野祥恵

三宅裕司が主宰する劇団スーパー・エキセントリック・シアター(以下、SET)の第59回本公演『太秦ラプソディ 〜看板女優と七人の名無し〜』がまもなく開幕する。開幕を目前に控えた10月某日、その稽古場を取材した。

今年の本公演は、太秦撮影所を舞台に、大部屋俳優たちの悲喜こもごもを描く内容。斜陽産業となりつつある時代劇映画業界を盛り上げるため、納得のいかないままアイドルを主演にしたり、ストリーミング配信業界からの参入に振り回されたりと、様々な事件に翻弄される面々の姿が、迫力のチャンバラシーンとともに描かれていく。

まずクスリとさせられるのがそのキャラクター名だ。柴陳一(しばちんいち)だの、陽空(ひそら)ばみりだの、金策深次(きんさくふかじ)だの、どこか聞き覚えのある名前のオンパレード。悪役の俳優が性格が良く、正義の味方役の俳優たちが性格が悪い……なんてエピソードも、「ありそう〜!」とニヤニヤしてしまう。ある意味ベタ、しかしそのベタさが妙に心地よい。

物語はいくつかの大きな事件が登場するが、基本は群像劇だ。少しばかりいい役付きになって喜んだのも束の間、主演のひと言で役を下ろされてしまったり、ちょっと芽が出てきた若手女優に先輩女優が嫌味を言ってみたり、はたまたスターと大部屋、立場が分かれてしまった同期女優の友情だったり……。個々のキャラクターにきちんとそれぞれのドラマがある上に、役柄の中で俳優たちの個性が生き生きと輝いているのは、劇団公演ならでは。そして劇団員たちのチャーミングさを引き出しているのは何といっても主宰の三宅だ。俳優たちはまだ稽古段階なのでたまに台詞がつっかえたり、中には出とちったり(!)という局面もあったものの、それすらも三宅は拾ってツッコんで、エンターテインメントにしてしまう。笑いが絶えない雰囲気の中、幅広い年齢の劇団員たちが伸び伸びと魅力を発揮している。三宅による“オグちゃん(小倉久寛)いじり”も健在、ふたりのアドリブが爆発するシーンは劇団員にとってもお楽しみのようで、舞台袖から体育座りで楽しそうに見ているキャストの姿も見てとれた。

終盤にはしんみりするエピソードもありつつ、全編を通して描かれるのは時代劇愛。そして“自分の居場所”を守るために奮闘する人々の姿は、社会の一員として生活するすべての人の心を打つのではないだろうか。もちろん伊勢本福三役(いせもとふくぞう、これまた伝説の大部屋俳優を髣髴とする名前である)の栗原功平らを筆頭に、派手なチャンバラシーンも満載、ラストは最近映画化もされた某ミュージカル風!? に歌って踊って、大団円! “ミュージカル・アクション・コメディー”を掲げる劇団にふさわしく、ミュージカルもアクションもコメディも、盛りだくさんに詰め込んだSETらしい爽快な一作だ。

公演は10月22日(金)から11月7日(日)東京・サンシャイン劇場にて。その後愛知公演もあり。チケットは発売中。

取材・文:平野祥恵

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