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アンジェ・ポステコグルーは信念の人である。
母国オーストラリアのクラブと代表で実績を残してきたこの53歳は、今シーズンから横浜F・マリノスを指揮している。Jリーグで3度の優勝を誇る名門は、2014年元日の天皇杯制覇を最後にタイトルから遠ざかっていた。
守備的なオーガナイズを伝統としてきたクラブに、ポステコグルーは攻撃的なスタイルを持ち込んだ。ハイラインとハイプレスを基調としたポゼッションスタイルは、Jリーグに新風を吹き込んだ。
とはいえ、野心溢れるサッカーが浸透するには、相応の時間が必要である。結果を残す過程では痛みも伴う。
『明治安田生命J1リーグ』の6節から、5試合連続で勝利をつかめなかった。先行する展開を生かせずに試合を引っ繰り返されたり、思いがけず打ち合いを演じることになったりもした。
7月18日のベガルタ仙台戦では、クラブ最多タイの8ゴールを奪って勝利した。ところが、翌節のFC東京戦でクラブワーストタイの5失点を喫して敗れてしまう。
揺れ幅の大きいサッカーが戸惑いを誘う。それでも、ポステコグルーは決してブレない。「監督を務めるうえで、信念を持つことは大事にしている」との言葉どおりに、独自のスタイルを貫いていく。チームは確実に成長してきた。
それだけに、『2018JリーグYBCルヴァンカップ』の決勝進出も驚きではない。鹿島アントラーズとの準決勝第2戦後、指揮官もこう話した。
「この『ルヴァンカップ』では毎試合、ホームでもアウェイでも点を取っている。神戸もG大阪も倒しているし、今日は鹿島を倒した。強いチームとやり合ってきたと思う。今日も良いパフォーマンスをしていた。決勝進出に値する内容だったと思う」
決勝戦の舞台となる埼玉スタジアム2002は、横浜FMにとって約束の場所と言っていいかもしれない。今年元日の『天皇杯』決勝でセレッソ大阪と対峙し、延長戦の末に1対2で敗れたのだ。
クラブがタイトルから遠ざかっていることは、ポステコグルー監督も理解している。チーム一丸となってつかんだ〈黄金の好機〉に寄せる思いは強い。
「2013年(度の天皇杯)を最後にタイトルを獲っていないということで、自分がこのチームに来たのもタイトルをもたらすためだと思っている。その意味で、決勝戦を本当に楽しみにしている」
湘南ベルマーレが待ち受ける10月27(土)の埼玉スタジアムで、ポステコグルー監督が統べる横浜FMはチームの進化を証明する。
文:戸塚啓
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