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ドラマや楽曲では、しなやかな身のこなしで観る者を引き付ける森田剛。アクションや映像の活用で、スピーディーかつ壮大な劇世界を得意とする劇団☆新感線。最高の相性を見せる彼らが手を組んだ、新感線プロデュース いのうえ歌舞伎☆號「IZO」が1月8日、東京・青山劇場でプレビュー公演を迎えた。
歴史上の出来事を、驚きの発想でフィクションへと転じる新感線芝居。今回その俎上に上がったのは、幕末を駆け抜けた「人斬り以蔵」こと岡田以蔵の生きざまだ。人を寄せつけない尖った人間像として描かれがちなこの人物に、脚本の青木豪が重ねたのは「犬」のキーワードだ。師である武市半平太の門下生として働くくだりのみならず、森田演じる岡田以蔵は、ただただ、ひたすら、師に愛されたくてころげまわる。愛されたい一心で刀をふるう。自分より秀でた者が現れれば猛烈に嫉妬し、彼を打ち負かそうとぐんぐん走る。けれど「策を練る」ことを知らない以蔵は、立ちはだかる壁に頭から突進し、傷だらけになってなお走り続ける。そんな「傷つき疾走する」青年像を、森田は素直にひたむきに演じている。
共演陣も味わい豊かだ。武市を演じるのは田辺誠一。穏やかさの裏に闇と野心を秘めた、多層構造の役作り。今回が初舞台となる戸田恵梨香は、以蔵の暴走と転落に心痛める幼なじみ・ミツを涼やかに演じた。歴史の渦でもがく志士たちを演じた客演陣、千葉哲也・池田鉄洋・山内圭哉と、劇団主要メンバー・粟根まことも誠実な力演ぶりをみせ、木場勝己・西岡◯←トク(徳の心の上に一があるトク)馬のベテラン勢が、舞台全体の色合いを引き締める。
そして特筆すべきは、いのうえひでのりの演出術だ。今回の物語は、まるで映画並みに時空が切り替わる。そのために欠かすことのできない説明部分を、彼はなんと正面切って、優美で巧みな映像であらわしてみせた。だから観客は思い知る。映像の持つ、雄弁さを。今、目の前で役者たちが、汗だくで演じている仕掛けも立ち回りも、映像でなら難なくできてしまうのだと。
それでもなお、役者たちは演じつづける。声をからし、血しぶきをあげて。ここで問われるのは、舞台人たちの覚悟と力量だ。どんなに優れた映像にも、彼らは生身で拮抗し、かつ圧倒しなければならない。新感線はまぎれもなく、そのことを知り尽くした職人集団だ。今作も回を重ねるごとに、舞台の温度は増していくに違いない。
本公演は、2月3日(日)まで東京・青山劇場、2月10日(日)〜19日(火)まで大阪・シアターBRAVA!にて上演。
取材・文:小川志津子
撮影:田中亜紀
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