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1981年に『泥棒家族』の題名で上演されたお洒落なラブ・コメディが、『恋はコメディー』とタイトルを改めて、2月5日、ル テアトル銀座で初日を迎えた。
原作はマリア・パコームの戯曲『教えてよ、セリーヌ』で、女優の“粋”を表現する手腕には定評のある加納幸和が演出を担当。自らも女形として活躍する加納が手掛けるとあって、岡本さとる(ドラマ『水戸黄門』、舞台『鬼平犯科帳』など)の脚色とあいまって、浅丘ルリ子と秋吉久美子という二大女優の魅力を存分に引き出す舞台となっている。
物語は失恋して旅に出ていたアンナ(渡辺えり)が、セリーヌ(浅丘)と暮らす石造りの屋敷に戻るところから始まる。高そうな調度品と大理石の階段、そして暖炉を備えた屋敷とあって、二人は貴族かと思われたが、屋敷に侵入してきた新米泥棒のギョーム(石井一孝)を軽くあしらうことで、彼女らがかつてフランス中を騒がせた女盗賊と知れる。久しぶりの椿事に、図らずも盗賊家業へのときめきを思い出すセリーヌとアンナ。そこへ、セリーヌの息子ピエール(風間俊介)が恋人のナターシャ(秋吉)を連れて帰ってくる。自分と同世代のナターシャにショックを隠せないセリーヌは、ある企みを思いつくが…。
華やかな女盗賊“達”が主人公とあって、後半にはどんでん返しが用意されているものの、そこは古きよき時代の戯曲。昨今の息の詰まるようなサスペンスとは異なり、前半のほとんどは浅丘と渡辺の会話で進行する。金髪ボブスタイルで次々とゴージャスなドレスを着こなす浅丘と、赤い巻き毛と豊満な体を揺らしながら、派手な柄のスーツを着こなす渡辺がさすがの貫禄。その上、カラッとした持ち味でズバズバとものを言う浅丘と、イイ男と見るとすぐに惚れてしまう渡辺の相性がいい。二人の明るいやりとりに、平日の昼間だというのに満員の客席からは、たびたび笑い声が聞こえていた。
ナターシャを演じる秋吉は、二部から登場。若いピエールを魅了する上品な画廊の女主人から、セリーヌとアンナに本当の姿を現していくくだりは、セリーヌと対峙する緊張のシーンながら、なんともコケティッシュ。浅丘と秋吉という大女優の美しい丁々発止が楽しめるのだから、見がいがあるというものだ。そこに絶妙な間合いで混じる渡辺のほか、明るくストレートな魅力を見せた石井、若い怒りを爆発させた風間の健闘も記しておきたい。母と息子の葛藤や、女同士の複雑な友情、そして自分の仕事に対する自負など、2時間のなかでセリーヌの表情に見えるのは、一人の誇り高い女性の人生の軌跡だ。それは浅丘ルリ子という女優だけが表現できる、品格漂う舞台である。
公演は2月24日(日)まで東京・ル テアトル銀座にて上演後、3月26日(水)まで全国各地を巡廻する。
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