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昨年11月に東京・日比谷に開場したシアタークリエがオープニング・シリーズ第3弾として初のミュージカル『レベッカ』を上演中だ。大ヒットを記録した『エリザベート』や『モーツァルト!』などを手掛けたミヒャエル・クンツェ(脚本・作詞)と、シルヴェスター・リーヴァイ(音楽)の黄金コンビによる最新作で、これが日本初演となる。山口祐一郎が謎を秘めた上流紳士に扮し、その後妻に大塚ちひろ、家政婦頭にシルビア・グラブと実力派の布陣で、圧巻の舞台が展開されている。
ヴァン・ホッパー夫人(寿ひずる)と共にモンテカルロを訪れた「わたし」(大塚ちひろ)は、上流紳士のマキシム(山口祐一郎)に出会う。事故で妻を亡くし、翳りを帯びた表情のマキシムに惹かれていく「わたし」。マキシムも頭の良さと純粋さをもつ「わたし」を愛するようになり、ついに結婚を決意。驚く夫人は、先妻レベッカが英国社交界の花形であったこと、「わたし」がその後継者になれるはずがないことを告げる。マキシムの居邸“マンダレイ”に足を踏み入れた「わたし」は、家政婦頭ダンヴァース夫人(シルビア・グラブ)の冷たい眼差しに迎えられる。屋敷中に色濃く残るレベッカの影。さらにマキシムまでが何かに怯えたような行動をとり始め…。
英国の女性作家ダフネ・デュ・モーリアの原作を元に、ヒッチコック監督によって映画化されたことでも知られる本作。その舞台版に際し、クンツェは登場人物の想いの応酬に焦点を当て、リーヴァイの楽曲はヨーロッパの暗い匂いを押し出してきた。さらに日本公演の演出を担当した山田和也は、「わたし」の一人称でストーリーが進む原作に着目。20世紀ゴシックロマンの金字塔と称される同作ならではの、謎解きとロマンがたっぷり味わえる舞台となっている。
マキシムを演じる山口は、『エリザベート』のトート役など最近続いていた人間ならぬキャラクターから一転、先妻に精神的に縛られ、苦しみ続ける男性像をリアルに表現。同時に、整えられた髪に白いスーツの上下で登場するシーンなどではハッとするようなダンディズムを見せる。「わたし」役の大塚は、一幕では周囲に翻弄される存在として立ち、それによって、二幕でダンヴァース夫人との対決を受け入れてからの意思的な表情がより鮮やかになった。そのダンヴァース夫人役のグラブが出色の出来だ。首までの黒い服と、髪を後ろにひっつめにした姿で屋敷を取り仕切る一方、カリスマを誇ったレベッカを慕って歌い、「わたし」を追い詰めていく場面では、狂気と艶とを全身から立ち昇らせる。
少女から大人へと脱皮してゆく者、高い身分をもちながら懊悩する者、そして心の闇に取り込まれ、破滅する者。それはいつの時代も人が惹き付けられてやまない、哀しく魅力的なトライアングルなのだろう。
公演は6月30日(月)まで絶賛上演中。
取材・文:佐藤さくら
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