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寂しい大人たちの切ないトライアングル。川上弘美の小説を劇団☆新感線・高田聖子が舞台化
2008年04月24日 17時01分 [演劇]
月影番外地『物語が、始まる』

劇団☆新感線の看板女優・高田聖子が、劇団公演では出来ない試みに挑戦しようと1995年に立ち上げた「月影十番勝負」。その名の通り、2007年の第10弾公演『約束』で終了宣言をしたこのユニットが、復活を熱望する声に応え再登場。新たに「月影番外地」という名を掲げ、4月23日に復帰公演の幕を開けた。物語は芥川賞受賞作家・川上弘美の小説『物語が、始まる』。再出発に似つかわしいタイトルである。演出は木野花、脚本は猫のホテルの千葉雅子。

劇団ではパワフルでコミカルな姉御的役どころを得意とする高田聖子。「月影十番勝負」ではうってかわってリアルな女性像を描いてきたが、それも生活に根付くリアルさではなく女性の情念や感性を見つめ、あぶり出すようなものが多かった。だが高田は今回、さらに生身の女性を切り取ることにしたようだ。主人公の山田ゆき子は、簡単に周囲に埋没してしまいそうな、どこにでもいそうな地味な女性である。物語は、そんな彼女がある日公園で“雛形”を拾ったところから始まる。

雛形……男の子の姿をしたそれは、成長する知能と肉体を持つ。お風呂に入れてあげ、本を読んで聞かせてあげ、ご飯を食べさせる。最初はお人形遊びのようだったゆき子と雛形の関係。だが“三郎”と名付けられ、急速に多くのものを吸収していく彼が、子どものような純粋さでゆき子を慕うことから、ふたりの関係も変化していく。一方でゆき子は恋人の本城との微妙な噛みあわなさを感じている……。

ゆき子も、三郎も、本城も、どこか寂しい、欠けた何かを抱えている。だからこそゆき子と三郎は寄り添うのだろうし、ゆき子と本城のすれ違いが哀しいのだろう。ちょっとファンタジックで、切ないトライアングル。だがゆき子は本城に別れを告げる。そして三郎とふたりの生活を築き始めるのだが、その幸せな時間も長くは続かず、皮肉で意外な急展開を迎える。季節はたったひと回りしかしていない、短い期間の出来事。だがゆき子は、すべてを失ったわけではないのだ。それまで浮かべていたあわあわとした笑みの底に、深い愛を強く育てている。ラスト近く、ゆき子と三郎がお互いの名を呼び合うシーンは、とてもシンプルだが究極のラブシーン。ふたりの純粋な思いに胸を締めつけられる。

本城を演じるのは拙者ムニエルの加藤啓、三郎を演じるのは動物電気の辻修。高田含め、強烈なキャラクターを得意とする3人の俳優が、触ると簡単に揺れてしまいそうな繊細な感情を丁寧に描く姿が新鮮だ。シンプルな舞台で、彼らが描くちょっと不思議で、とても切ないラブ・ストーリー。人間は寂しい生き物で、だからこそこんなに素敵な物語が生まれるのだろう。3人の人生を切なく思いながらも、心のどこかに暖かな灯がともる。月影番外地は、そんな現代のおとぎ話で始動した。

月影番外地『物語が、始まる』は東京・赤坂RED/THEATERにて、5月4日(日・祝)まで行われる。

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