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2007年、カンヌ国際映画祭の第60回を記念して製作・上映された『それぞれのシネマ』。カンヌに縁のある総勢36人の監督が「映画館」を舞台に「3分間」という上映時間で“それぞれの”腕を披露した同作が、8月2日より渋谷ユーロスペースを皮切りに全国をまわる。
参加監督はテオ・アンゲロプロスやマノエル・デ・オリヴェイラの巨匠をはじめ、ヴィム・ヴェンダース、デヴィッド・クローネンバーグ、アキ・カウリスマキら36人。日本からは9月20日に『アキレスと亀』の公開を控える北野武監督が選ばれている。うちジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌとジョエル&イーサン・コーエンの2組が兄弟監督であるため、全体としては34本の短編オムニバスとなっているが、カンヌ国際映画祭ではデヴィッド・リンチ監督作『アブサーダ』の完成が間に合わず33本で上映された。
日本では2007年の第8回東京フィルメックスでもオープニング作品として上映された本作は、実は既にDVDが発売されている。ではなぜ今、敢えて劇場公開に踏み切ったのか。上映館であるユーロスペースの北條誠人支配人はその理由をこう語る。
「それはこの短篇集が“映画館”をテーマにしているから。ここには多くの映画体験と映画館体験が描かれています。私たちが過去に観た“名作”が引用されて新しい命を吹き込まれ、一方では都市の加速のついた開発のなかで作家はノスタルジーに浸っていきます。この世界中の監督たちと映画館・映画体験をみんなでしたいな、みんなで感じて考えたいな、と思いました。他者とともに後ろから光照らされて眼前に映し出されるのものを一緒の時間で体験するということは実はとても贅沢なことだと思います」
現在の映画館や観客をとりまく状況は決して明るいものばかりではなく、中にはそれを皮肉ったペシミスティックな作品もある。そこには夢や希望だけではもはや映画を語れない作り手の誠実さがある。しかしどの監督も根底にあるのは映画愛であり、その意味でこれは新世紀の『ニュー・シネマ・パラダイス』ともいえる。
なお、今回はコーエン兄弟作『ワールドシネマ』とマイケル・チミノ作『翻訳不要』を除く全32作品での上映となる。『翻訳不要』はDVDに収録されているが、『ワールドシネマ』は権利上の問題から今後も上映やソフト化の予定はなく、現時点ではカンヌでのみお披露目された幻の作品となっている。
また、時期を同じくして開催される北京オリンピックにちなんで、上映期間中には最も面白かったベスト監督を投票する「監督たちのオリンピック」も開催。観るだけでなく、参加する映画体験をぜひ共有したい。
文:那須千里
『それぞれのシネマ』
8月2日(土)よりユーロスペースにて公開
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