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“沖田総司は女だった”。この衝撃的な設定で1989年の初演時に大旋風を巻き起こし、再演を重ねてきたつかこうへい作「幕末純情伝」が8月13日、注目のキャストを迎え開幕。それに先だち12日、新橋演舞場で公開通し稽古と囲み取材が行われた。
時は幕末。天皇家に生まれながらも労咳のために捨てられたひとりの女児は、男として育てられ新撰組一番隊組長・沖田総司として人斬りを続けていた。ある日、偶然出会った坂本龍馬に恋をしてしまう総司。幕末の動乱、そして新たなる時代の幕開けという大きな歴史の流れに、その恋も飲み込まれてゆく。
沖田総司を演じるのは石原さとみ。囲み取材で「毎日稽古が楽しくて仕方がなかった」と語った彼女。その言葉が嘘ではないことを証明するように、見事に“つか舞台“のヒロインをつとめ上げた。キレのいい動き、ひたむきさと可愛らしさ、そして時折見せる残酷さ……少年ぽさの中に美しく、生々しい“女“を時折覗かせる沖田総司を魅力的に体現した。
そして、これまで男優が演じてきた坂本龍馬役は、なんと女性である真琴つばさが演じることで話題となった。宝塚退団後、初めて男性役を演じるという真琴。宝塚の男役を思わせるスタイリッシュな服装で颯爽と舞台上に現れる姿は、これまでのどんな作品の“龍馬像“とも違う凛々しさだった。
また、映像では優しい印象の役柄が多かった吉沢悠も、“つか舞台”独特の熱さをしっかりつかみ、かつてない顔を見せた。過酷な過去を抱えた高杉晋作役を、言葉通り“体当たり”で演じていた。そしてもちろん、つか作品ならではのタキシードでのダンスシーンも健在。作品の持つダークな部分と、この華やかさの鮮やかな対比はつか作品ならではだ。
18年振りにつかこうへい自らが演出を手がけることでも話題となった今回の上演。ラブストーリーのイメージが強かったこれまでの「幕末純情伝」とはかなり印象が異なった作品に仕上がっている。初演から19年を経て、未だなお殺伐としていくこの世界に警鐘を鳴らすかのように、舞台中に繰り返される“憲法第九条“の言葉。かつて願った平和、そして平等への想い。そして後半になるにつれ、なぜ今回は坂本龍馬を真琴つばさが演じたかという理由へも繋がっていく。
囲み取材で真琴つばさは「『幕末純情伝』という世界に、私たちが坂本龍馬、沖田総司という役柄を借りて遊びに来ていると思って観て欲しい」と語った。時代とともに今なお進化を続ける2008年の“つかワールド”がここにある。
公演は、8月13日から27日(水)まで東京・新橋演舞場にて上演。その後、8月30日(土)・31日(日)に京都・南座、9月3日(水)・4日(木)に名古屋市青少年文化センター アートピアホール、9月6日(土)・7日(日)にアクロス福岡 福岡シンフォニーホール、9月9日(火)・10日(水)に金沢・北國新聞赤羽ホールで行われる。
取材・文:川口有紀
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