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中国の幼稚園教育の実情を“問題児”監督が語る
2008年08月22日 09時58分 [洋画]
『小さな赤い花』場面写真

ロカルノやベルリン、ベニスなど、世界の名だたる映画祭で受賞歴を持つ中国の異才、チャン・ユアン監督。『ただいま』や『緑茶』といった劇映画はもとより、『クレイジー・イングリッシュ』といったドキュメンタリーも手掛ける彼は、それらの大半の作品で“生身の中国”ともいうべき中国の実情を独自の視点で切り取ってきた。その中で今回、最新作『小さな赤い花』で、彼が新たな題材として選んだのは“子供”と“教育”。今も続く中国の過剰な教育政策の大いなる矛盾を、全寮制の幼稚園に預けられた少年を主人公に、幅広い視点をもって鋭く描き出している。

「僕が国内で活動するには多難が伴う」と語る監督と同様に、しばしば中国で“問題児”と称される友人の人気作家、ワン・シュオの小説をもとに示される主題の中国の幼稚園事情は、お遊戯して積み木で遊んでいるような日本のそれとは大違い。厳格な制度で統制された園では、子供の自由はなく、自主性を尊重されることもない。あることで先生に反抗しようものならば独房に入れられてしまう。監督いわく「僕も幼少期は同じような幼稚園に通っていた」とのことで、劇中のエピソードのいくつかは自身の体験が反映されているという。

「撮影で子供たちの姿を見ているうちに、4歳時の苦い経験や、そのときの気持ちが次々とフラッシュバックで頭に浮かんできた」というぐらい、幼稚園時の体験は監督自身の心の奥底にも深く刻まれているという。映画では、この教育方針になじめない4歳児のチアンの、反逆ともいえる学園との自由への戦いを、ユーモアを交えながら描出。そこには、子供の心を踏みにじる大人に対しての痛烈なメッセージが込められているように思える。実際に監督も「子供には子供の世界がある。いくら小さくても彼らにも大人と同様に意思と魂を持っていると、僕は声を大にして言いたい。それを一番表現したかったんだ」と、物語に込めた想いをこう強調する。

この映画は、単に中国の教育方針のみを攻撃するものではない。少年と教師の間に関係悪化から生まれる軋轢や、先生が子供に振りかざしてしまう絶対的な権力といったものは、実はどの国の人間社会においても多かれ少なかれ存在すること。監督も「これは中国国内の問題に言及した物語ではない。世界に通じる、普遍的な物語。子供の目を通して、大人が生きる国、社会、世界を表現した映画なんだ」と言葉に力を込める。ベルリン映画祭では国際芸術映画評論連盟賞獲得。社会に鋭い目を注ぐチャン監督の意欲作に注目してほしい。

文・水上賢治

『小さな赤い花』
8月23日(土)シアター・イメージフォーラムにて公開

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