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劇場前にはズラリと歌舞伎役者名ののぼりが並び、赤坂サカスがまるで歌舞伎小屋の様相。中村勘三郎が赤坂ACTシアターで歌舞伎作品を上演することで話題となった『赤坂大歌舞伎』の9月3日の開幕に先駆け、同日の昼間に公開通し稽古が行われた。
演目はそのタイトルの通り、狐と狸の化かし合い的人間模様が楽しい『狐狸狐狸ばなし』から。元上方の役者・伊之助(中村勘三郎)の女房・おきわ(中村扇雀)は昼間から酒浸りで、生臭坊主・重善(市川段治郎)と不貞の仲。 その重善に金満家の娘・おそめ(片岡亀蔵)との縁談が持ち上がり、激怒したおきわは重善の「一緒になりたいのなら旦那を殺してこい」という言葉を真に受けてしまう。毒を盛り、首尾よく伊之助を殺すが、死んだはずの伊之助が現れ……というストーリー。元女形でとにかくしつこい性格という伊之助をはじめ、男を舐め回す性癖から“牛娘”というあだ名のおそめ、いかにも“女の権化!”といった感のおきわなど、個性的で人間くさいキャラクターたちがお互いに騙し合う様がとにかく可笑しく、理屈抜きで笑える作品だ。また、あちこちで勘三郎のサービス精神が満開。さながらコントのような伊之助とおきわのやりとりをはじめ、毒を盛られて頓死する場面ではあの手この手で観客を楽しませる。また、最近はどちらかというと爽やかな二枚目役が多かった市川段治郎が、女を翻弄する生臭坊主を演じているのも見もの。
続く『棒しばり』は、狂言を元にした歌舞伎ではおなじみの演目。用事で外出することになった大名(片岡亀蔵)は、自分が留守の間に召使いの太郎冠者(中村七之助)と次郎冠者(中村勘太郎)が酒を盗み飲むのが悩み。ふたりを棒にしばりつけ出掛けることにするが、酒が飲みたい一心のふたりは一致団結してどうにか酒を飲もうとし……という作品。棒に縛られた次郎冠者と後ろ手を縛られた太郎冠者が、あの手この手で酒を飲もうとしたり不自由な格好のまま舞い踊る様が見事で面白い歌舞伎舞踊だ。演じる勘太郎・七之助は実の兄弟だけあって息もピッタリ、彼らの持つ若さと茶目っ気が楽しい作品へと仕上がっている。
パンフレットで勘三郎自身が「まだ一度も歌舞伎を観たことがない人にも楽しんでもらえるものを」と語っているように、2演目ともとてもわかりやすく、予備知識が無くても誰でも楽しめる演目。たくさんの人に歌舞伎を観て欲しい、という勘三郎の意気込みが伝わってくる舞台だ。
公演は9月20日(土)まで赤坂ACTシアターで行われる。
取材・文:川口有紀
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