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北村有起哉、黒谷友香、きたろうら出演の恋愛喜劇「青猫物語」が5日夜、東京・日比谷のシアタークリエで幕を開けた。マキノノゾミの手により1994年に誕生した本作は、マキノの劇団M.O.P.で過去2度上演。今回は三谷幸喜作品などにもたびたび携わってきたシチュエーションコメディの名手・山田和也の演出により、12年ぶりの上演となる。
時代は昭和8年。当時“新劇の聖地”と呼ばれた「築地小劇場」裏にたたずむ、盲目のマスター・ブルさん(きたろう)経営のカフェ「青猫」が舞台。築地小劇場所属の新劇青年・八起静男(北村)は「青猫」で働く踊り子兼娼婦の宮下そら(黒谷)と相思相愛の仲だが、ふとしたすれ違いから破局。頑なになってしまった彼女の気持ちを探ろうと、八起は老人の姿でそらの前に現れるが、その風貌が天下の海軍元帥・東郷平八郎とそっくりだったことから、おかしな三角関係に陥ってしまう……。
コメディの定石である“すれ違い”や“カン違い”のオンパレードで、近頃ちょっと珍しいドタバタ劇に仕上がっている。ふたり以外にも、「青猫」には八起の劇団仲間やそらの客などさまざまな人物が入れ替わり立ち替わりやって来て、それぞれがひと騒動起こして帰っていくのだ。この手のコメディの肝となるのは、スピード感やテンポだろう。「んなバカな!」な展開を観客に納得させるには、立ち止まって考える隙を与えないこと。だが笑いへと誘うための適度な間は必要で、その絶妙な匙加減は“職人の仕事”とも呼ぶべき繊細なもの。その技を持つ演出家・山田のもと、役者たちはハメを外し過ぎないバランスのいい演技を見せている。主役の北村と黒谷は本格喜劇初挑戦だが、周りには手練れの面々がズラリ。近江谷太朗(元キャラメルボックス)、岸博之(元カクスコ)、小須田康人と山下裕子(第三舞台)、小椋毅(モダンスイマーズ)など、小劇場出の実力者が贅沢に脇を固めているのも演劇ファンには見どころだ。
メインではやはり、北村有起哉の芸達者ぶりが光る。八起の純粋さと頑固さを軽やかに表出させ昭和初期の青年を説得力持って息づかせたのは、彼ならではの味だろう。黒谷演じるそらの天然なセクシーぶりは、一服の清涼剤。美しい立ち姿も印象に残った。ほぼ出ずっぱりのマスター役きたろうは、舞台中央の扉に描かれた“黒猫”同様、作品の守り神的存在。受けに徹した彼のブレない演技が、屋台骨として作品をしっかりと支えている。古き良き濃厚なレトロ感とともに、“ドタバタは1日にしてならず”の職人技も堪能してほしい。
公演は、9月28日(日)までシアタークリエにて上演される。
取材・文:武田吏都
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