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「レ・ミゼラブル」や「ベガーズ・オペラ」など、多くの名作を手がけてきたジョン・ケアード。そんな彼の最新演出作「私生活」が10月3日(金)、東京・シアタークリエで幕を開ける。開幕に先駆け、10月2日(木)公開稽古が行われた。
本作は、20世紀を代表する脚本家、ノエル・カワードによる傑作コメディ。作品が誕生したのは80年近くも前のことだが、その魅力は少しも色あせることがない。それは、ここで展開される男と女の関係が、現代にも通じる、ある普遍性をもって描き出されているためだろう。
登場人物は4人。エリオット(内野聖陽)とシビル(中嶋朋子)、アマンダ(寺島しのぶ)とビクター(橋本じゅん)は新婚カップル。旅行先のホテルに到着し、それぞれのバルコニーで愛を語っている。だがその会話は、いつしかエリオットの元妻・アマンダ、アマンダの元夫・エリオットの話題に。口論の末、シビルとビクターは部屋を出て行ってしまう。そして、元夫・エリオットと部屋が隣りだと気づいたアマンダは、彼に再会。恋を再燃させたふたりは、それぞれのパートナーを捨て、駆け落ちしてしまう…。
物語が盛り上がりをみせるのは、ふたりが駆け落ちしてからの後半。久々の再会により情熱的に愛を交わしてはいたものの、やはりそこは過去に離婚したふたり。ささいな口喧嘩が、いつの間にか取っ組み合いの喧嘩へと発展してしまう。このふたり、お互いを愛する気持ちは相当なもの。それだけに、愛のベクトルが逆に向かった時には、なんとも壮絶な修羅場と化してしまうのだ。だがこの修羅場、観ているこちらとしてはなんとも可笑しい。というのも、演じる内野と寺島は、文学座の研修生時代に同期だった仲。だからこそ、その喧嘩のシーンでも遠慮や躊躇はない。思い切ったふたりの喧嘩っぷりに、観客はつい、クスリとせずにはいられなくなってしまうのだ。また、抑えた演技の中に、ふと強烈な笑いを覗かせる橋本。女性らしいしとやかさから一変、突如感情を爆発させる中嶋。このふたりの存在が、ラスト、男と女の不思議な関係性を、より際立つものにしている。
本番を直前に控えた会見で、内野は次のように語っている。「男と女の関係に対して前向きになれるというか、改めて、男と女っていいなと思えるようなお芝居です」。現代には、世の中をクールに生きようとする人が多い。それは男女の関係においても同様で、つい相手との距離をとってしまいがちだ。しかしエリオットとアマンダは、常に100%と100%。正面からぶつかり合い、しかもそのすべてを言葉に、そして行動に出してしまう。それはふたりの欠点でもあるが、現代の恋に慣れた人々には、大きな魅力としても映るだろう。男と女の手引書とも言える本作。ぜひ大切な人と一緒に、劇場へと足をお運びいただきたい。
公演は、10月3日(金)〜31日(金)まで、東京・シアタークリエ、その後、名古屋・中日劇場、大阪・イオン化粧品 シアターBRAVA!にて上演される。
取材・文:野上瑠美子
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