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今年2月に92歳で他界した巨匠・市川昆監督が、1993年に完成させながら、その後未公開となっていた山本周五郎原作の幻の作品『その木戸を通って』が第21回東京国際映画祭で特別上映され、24日、主演の中井貴一と浅野ゆう子が舞台あいさつを行った。
本作は、城勤めの単調な日々を送る平松正四郎(中井)と、彼の前にある日突然現れた記憶喪失の娘・ふさ(浅野)との出会いから別れまでを、美しい緑の竹林、陰影を協調した日本家屋などとともに、市川監督ならではの映像美が堪能できる珠玉の一品。
浅野は「この作品を大きいスクリーンで見たいという夢が、完成から15年たってやっとかないました。今はとても幸せです」と感無量の面持ち。日本初の長編ハイビジョンドラマとして撮影された本作の現場では、普通の映画撮影とは違う苦労があったそうで「女優の命ともいうべき照明がほとんどないので、最初は不安でしたが、監督が『大丈夫や、あんたは明かりがなくてもきれいやで』とおだててくれて、すっかりいい気分になって演技ができました」と、女優を美しく撮ることに定評があった市川監督ならではと思わせるエピソードを披露。すると、それを聞いていた中井が「監督は女優さんには優しかったんですね。僕にはそんなこと一言も言ってくれなかった」とうらめしそうに話して観客を笑わせた。
大の肉好き、そしてタバコを1日4、5箱吸うヘビースモーカーだったという市川監督。浅野が「80歳を過ぎているのに、一緒にすき焼きを食べに行くと、すき焼きとオイル焼きをそれぞれ2人前ずつ召し上がっていた」と話すと、中井も「監督を見ていると、昨今の健康ブームには乗らなくてもいいと思った」と語るなど、生前の市川監督の驚異的な元気さをしのばせる話で盛り上がった。
本作の冒頭では、竹の葉から落ちたしずくがキラリと光り、空中にストップモーションで止まる。そこから主人公の回想が始まり、ラスト近くでそのしずくが落ちる。そう、この物語は、しずくが落ちる一瞬の間に主人公の脳裏をよぎった話なのだ。この市川監督の意図を知った上で見ると、より味わい深い作品になるはず。ぜひそのシーンを注意して見てほしい。
『その木戸を通って』
11月8日(土)より、丸の内TOEI2ほかにて全国順次ロードショー
取材・文・撮影:吹田惠子
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