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演劇集団キャラメルボックスが大切に紡ぎ続けてきたクリスマス公演。その記念すべき20回目となる最新作「君の心臓の鼓動が聞こえる場所」が11月1日、札幌・道新ホールで開幕した。脚本・演出の成井豊が17年ぶりに書き下ろした小説を舞台化したもので、5年ぶりとなる札幌公演の初日は満員御礼。今回が初舞台となる黒川智花は、実に堂々とヒロインを演じきり、朝晩には息も白く変わる札幌の街にキャラメルボックスから一足早いクリスマスプレゼントが贈られた。
舞台は、クリスマスを間近に控えた12月23日の夜――東京。バツイチで独身のテレビ脚本家・根室典彦(西川浩幸)のもとに、突然、札幌から娘のいぶき(黒川智花)が訪ねてくる。19歳になったいぶきは、自分が書いたという原稿用紙の束を差し出して、この小説を出版したいと言う。典彦の母・花絵(大森美紀子)や妹・美華子(前田綾)、マネージャーの真知子(岡内美喜子)たちはいぶきの来訪を喜ぶが、典彦は14年ぶりに会った娘に対して戸惑いを隠せない。そんな中、典彦は同僚で人気作家の砂川(大内厚雄)にいぶきの小説を見せると、出版も可能ではないかという好感触を得る。しかし、いぶきはどうしても自分の身の上を隠して出版したいと主張して……。
本作は“人が人を思う気持ち”が随所に織り込まれて、これぞキャラメルボックスと言わんばかりの意欲作だ。特に西川は約2時間出ずっぱりで、膨大な量のセリフを説得力ある演技と共に着実に積み上げることで、不器用だが実直な主人公を体現して物語を引っ張った。また、黒川は難しい役どころを気負いすることなく、娘の胸に迫る気持ちを等身大の演技で表現。そんな父と娘のみならず、主人公の家族や同僚など全ての登場人物が輝いていて、それぞれの思いが直球で伝わってくるのは出演者全員の全力の演技と、脚本・演出に真柴あずきも加わって支え合っている集団だからこそ成せる業だろう。
人は大人になっていくのに連れて、人を思うがゆえに、時には人を疑ったり、裏切られることを恐れて信じるのを避けようとすることがある。しかし、キャラメルボックスの今回の舞台では、思いはいつか必ず通じる、と“人が人を思う気持ち”の正しさや潔さを示している。それが決して間違いではないことは終演後、満席の観客からの鳴り止まない拍手が証明していた。このクリスマスツアーで、大切な誰かの心臓の鼓動が聞こえる場所にいられるのがどんなに素晴らしいことかを感じ、考えてみてほしい。
キャラメルボックス2008クリスマスツアー「君の心臓の鼓動が聞こえる場所」は、拍手喝采の札幌を後に、11月9日(日)から16日(日)まで新神戸オリエンタル劇場、21日(金)から23日(日)まで名古屋・名鉄ホール、29日(土)から12月25日(木)まで東京・サンシャイン劇場にて上演される。
撮影:伊東和則
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