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井ノ原快彦が下請け工場のダメ二代目に! 次々起こる至難を乗り越えられるのか?
2008年11月04日 15時56分 [演劇]
『昭和島ウォーカー』開幕
『昭和島ウォーカー』舞台写真

去る11月2日、東京グローブ座にて井ノ原快彦主演の新作舞台『昭和島ウォーカー』が開幕した。作・演出の上田誠(ヨーロッパ企画)と井ノ原が意気投合、ともに実家が工場を営んでいたことから生まれたこの企画は、近未来の下請け部品工場「アサヒロボット」で物語の幕を開ける。ベテラン技術工チーム(中山祐一朗、石田剛太ほか)と部品組み立て工チーム(京野ことみ、松本まりか、福田転球ほか)。いつものように無駄話を交わしながら仕事を始め、彼らを管理するマネージャー(粟根まこと)がその仕事ぶりにいちゃもんをつける。ゴネる工員、トガるマネージャー。そんな中、不意にこの工場の二代目(井ノ原)が海外放浪から帰国。先代(井ノ原、二役)の死を知り、自らの進むべき道を悟って帰ってきたのだ……。

ここまでの展開から想像されるのは「若き二代目の成長物語」だろうか。たしかにそう言えなくもないのだが、そこは上田の意欲作、そうは問屋がおろさない。何しろこの二代目がダメっぷりを炸裂させるのだ。次々と起こる新たなトラブル、対応に追われる工員たち。いたちごっこのやりとりの中で、工員たちは少しずつ見出していく。歯車のひとつとしてではなく、自身の判断で仕事を果たしていく喜び。個人作業ではなく連携プレイで、目の前の壁を越えていく喜び。トラブルが、彼らをチューンアップさせていく。

何が起きてもあっけらかんと、笑ってしのぐ二代目を井ノ原が好演。どう考えてもはた迷惑な存在なのだが、その笑顔に誰もイラつかないのは、彼の天性によるものだろう。そしてディープな演劇好きな方々ならご承知の、ゆるゆるの“ヨーロッパ節”はここでも健在だ。人の話に挟み込む茶々の数々や、中山を交えて新聞を読みつつのうだうだ話の場面が抜群に光る。京野、松本の女優陣もそれぞれの持ち味を生かして健闘。そして粟根・福田のいぶし銀コンビが、若者たちのしでかす大波小波を巧みに乗りこなして楽しげだ。

突き進む物語は、とんでもないクライマックスを迎える。それは言ってしまえば仕様もない爆笑の展開ではあるのだが、でも胃袋の底のあたりから、うずうずっと達成感がこみ上げる。迫りくる事態に全員が、それぞれの持ち場に着いて仕事を果たす。その動きがやがてシンクロしていき、ひとつの“チーム”と化していく。

思えば演劇というものは、座組が真の意味で“チーム”かどうかが如実に表れる表現形態だ。チームでものをつくることを生業とする家に育った井ノ原と上田が、演劇の現場で意気投合したという事実に、何ともうなずける力作となった。

11月23日(日)まで東京グローブ座、11月27日(木)から30日(日)まで大阪・シアタードラマシティにて上演。
取材・文:小川志津子

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