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中国社会の闇を浮かび上がらせる気骨ある1本『サバイバル・ソング』【東京フィルメックス】
2008年11月27日 10時00分 [映画祭]
『サバイバル・ソング』場面写真

『サバイバル・ソング』を手がけたユー・グァンイー監督の前作で、昨年の東京フィルメックスでも上映されたドキュメンタリー映画『最後の木こりたち』は、もし同映画祭に“インパクト賞”なるものがあったならば、確実に受賞していたと思えるほど衝撃的な内容だった。

あまりに過酷な労働で疲弊した馬は、切り出した木を運ぶ途中でバタバタと倒れ、やがて息絶える。生活のかかっている木こりたちは、そんなことに動揺することもなく、とにかく稼がねばならないからひたすら木を切り倒す。そこには経済発展の恩恵などとはまったく無縁の、中国の地方で懸命に生きる人々の営みが克明に刻まれていた。それに次いで届けられた本作だが、続編的なアプローチを感じさせる1本となっている。

今回は貯水池建設で人が消えゆく黒龍江省の村で暮らす、シャオリーツーというひとりの男を主軸に追っている。この被写体となるシャオリーツーは、落語でいえば与太郎のような、ちょっと抜けているけど、どうにも憎めない人物。裏切って別の仕事に走った彼だが、仕事がなくなると、元雇い主のハンのところにのこのこ戻ってくる。あきれ顔ながらハンは仕方なく雇う。これで普通なら恩義を感じるところだが、シャオリーツーは、ハンの奥さんのトイレを覗き(周辺に家がないからか囲いもないスペースで、覗こうと思えばいくらでも除けてしまう)、女性には妙に強気で奥さんの洗濯物に唾や小便をかけたりと、悪さが絶えない。そして、寂しさの解消からか毎夜、大声で歌を熱唱しまくる。こう書くとダメ男のしがない日常を追ったように思うかもしれない。ところが彼の周囲を追うことで最終的に浮かび上がってくるのは、政府の身勝手な政策や、行政の不正といった、にわかに信じがたい中国社会の闇。

シャオリーツーとその雇い主ハンの姿を収めた記録は、やがて予期できるようで予期できない結末へつながることになる。中国インディペンデント映像作家の告発であり、気骨ある1作と断言したい。

作品評価:★★★
文:水上賢治

コンペティション『サバイバル・ソング』
■東京フィルメックス
11月30日(日)まで有楽町朝日ホールほかにて開催中

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