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毎年10月に開催されているサンパウロ映画祭が企画製作した『ウェルカム・トゥ・サンパウロ』は、17編のエピソードで構成されたドキュメンタリーのオムニバス映画。世界の映画作家たちが、南半球最大の都市とされるブラジル・サンパウロの街を切り取っている。
近年、豪華なメンバーが競演したオムニバス映画が次々と発表されているが、ここに名を連ねる監督たちも世界に知られる名手たち。『パトリオット・ゲーム』などで知られるオーストラリアのフィリップ・ノイス、フィンランドのミカ・カウリスマキ、『グッバイ、レーニン!』が世界的なヒットとなったドイツのヴォルフガング・ベッカーらビッグネームが並び、映画ファンとしては興味を覚えるに違いない。
その期待を裏切らず、それぞれの監督が、それぞれの視点でサンパウロという町にアプローチしているが、個人的に印象に残ったのは『モーターサイクル・ダイアリーズ』のダニエル・トマス監督の『オデッセイ』と、『黒い眼のオペラ』の鬼才、ツァイ・ミンリャンの手がけた『水族館』。『オデッセイ』、1本の高速道路をひたすら走って撮った車窓からの映像を使い、朝昼晩、天候でまったく違った表情を見せるサンパウロの街の風景を映し出す。その場の空気まで伝わってくるような映像が印象深い。一方、『水族館』はツァイ・ミンリャン監督ならではの観察眼が光る。年季の入った高層アパートを表題とおり、水族館に見立て、時折、窓から顔を出す人々の姿を収めることで、見事にサンパウロ庶民の暮らしぶりを伝える。まるで動物に気付かれないようにカメラを回すネイチャー・ドキュメントを感じさせる隠し撮り的な映像もちょっとスリリングで面白い。また、女優の岡田茉莉子がインタビュアーとなってサンパウロでレストランを経営する日系3世の女性と向き合った、吉田喜重監督の『ウェイトレス』は日本人として心にとどめたい1本。ブラジルへ渡った日本人の歴史と、今を生きる日系人の心情が見えてくる。
文:水上賢治
特別招待作品『ウェルカム・トゥ・サンパウロ』
■東京フィルメックス
11月30日(日)まで有楽町朝日ホールほかにて開催中
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