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アジアとヨーロッパの匂いが同居するような個性を感じる【東京フィルメックス】
2008年11月28日 19時23分 [映画祭]
『ヘアカット』場面写真

通常の劇場公開ではなかなかお目にかかることの少ないカザフスタン映画だが、世界に飛び出るに十分な才能を持つ映画作家が生まれてきていることを示すに十分な1作だった。

この映画の主人公は、髪をショートカットにしたボーイッシュないでたちの少女アイヌール。まだ10代で多感な時期にいる彼女は、離婚した両親をはじめとする身勝手な大人たちに反感を抱き、いつしか周囲のあらゆる人々に反発を覚え、学校生活にもうまく溶け込めない。世の中に不満いっぱいの彼女の不良行為は次第にエスカレート。こんなときに限って悪いことも重なり、出口のない袋小路に入っていってしまう。

この明日が見えず、暴走するヒロインが魅力的。彼女が胸に抱く社会の不条理や不平不満は10代のころに1度は通る道で、そのころのビターな経験が思わずよみがえる。詳しいプロフィールが手元にないので詳細はわからないが、ヒロインを体現したイネッサ・キスロヴァはおそらく10代の女優。中性的な顔立ちでちょっとミラ・ジョヴォヴィッチ似の意志の強そうな目をした彼女のたたずまいは、鮮烈な印象を残す。10代の少女の揺れ動く女心が瑞々しくかつ繊細に描かれているので、てっきり女性監督の作品と思いこんでしまったが、手がけたアバイ・クルバイ監督は男性。これにはちょっとびっくりさせられた。

今回が長編デビュー作だが、次回作を期待させるに十分。青春映画の体裁ではあるが、細かく見ていくとカザフスタンの抱える社会問題を匂わせる細かい伏線が張られており、ちょっとブラックな色合いのあるストーリーの結末を含め、実はエッジの効いた社会派ドラマとしても見られないこともない。また、これはカザフスタン最大の都市アルマティを舞台にした物語であったからかもしれないが、クルバイ監督にはアジアとヨーロッパの匂いが同居するような個性を感じた。

作品評価:★★★ 水上賢治

コンペティション作品 『ヘアカット』
■東京フィルメックス

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