あなたが好きなタレントの
出演情報をメールでお知らせ♪

タレント ニュース

映 画

ジャ・ジャンクーも認める若き女性映像作家、エミリー・タン【東京フィルメックス】
2008年11月28日 19時51分 [映画祭]
『完美生活』場面写真

英語タイトルが“PERFECT LIFE”とつけられている本作だが、ここに登場するのは完璧な生活とはほど遠い暮らしを送るふたりの女性。将来を展望できない東北地方で暮らす21歳のリーと、香港在住の夫との離婚がおおもめとなってしまったジェニーというままならない現状を打破しようとする両ヒロインの姿が描かれる。

各人のエピソードがフィクションとドキュメンタリーという別々の手法で並行して語られる野心的な作り。2つのエピソードが直接的に絡み合うこともないので(最後に少しだけすれ違うが)、この並びに正直なところはじめは少々戸惑う。だが、映画が進むにつれ、ぶつかり合っていたフィクションとドキュメンタリーの境界線がいつしか融合し、それと時を同じくするようにリーとジェニーの置かれた状況と彼女たちの抱く心境が密接にリンク。結果として、監督の大胆な手法が光る個性的な作品が出来上がった。

手がけたエミリー・タン監督は、本作のプロデューサーであるジャ・ジャンクーも認める若き女性映像作家。まだ30代の彼女が切り取る中国は、女性からの目線で見た現状を見せてくれて興味深い。苦難に見舞われながらも決して下を向かないヒロインの心境を丹念に追いながら力強いタッチで描き出し、人物描写力も光る。

今年の東京フィルメックスのコンペティション部門には、本作を含め3人の中国人監督の作品が選出されているが、いずれもテーマとして浮かびあがってくるのは“地方と都市”“虐げられる庶民”。これは偶然ではない。数年前からすでに、中国で格差社会が急激に進展していることは世界中で報道されているが、外側から思う以上に現状はもっとシビアで、悪化の一途をたどっているのかもしれない。そこに今の中国の映画作家たちは大きな危機感を覚えているように思える。あくまで個人的な見解に過ぎないが、本作を観終わったあと、そんなことを少し考えた。

作品評価:★★★ 水上賢治

コンペティション部門『完美生活』
■東京フィルメックス

チケットぴあ

映画のニュース もっと見る

最新ニュース もっと見る