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自然な子供の演技を引き出した奇跡の映像に驚く【東京フィルメックス】
2008年11月28日 20時08分 [映画祭]
『木のない山』場面写真

釜山出身で、現在は米国に移住しているソヨン・キム監督が手がけた本作は、小さな姉妹の物語。行方知れずの父親を探しに出た母親の帰りを待つ幼い姉妹の姿が映し出される。

まず、何より驚かされるのが演出面。手持ちカメラを多用したドキュメンタリー・タッチの映像は、姉妹の姿、特に6歳の姉ジンの顔に“鼻の先にまで迫っているのではないか?”と思うぐらいの接写で追い続ける。にもかかわらず、子役の女の子の演技はカメラの存在などまったく感じさせないほどナチュラルでフィクションであることを忘れさせるほど。これは褒め言葉になるのかわからないが、その辺の公園で騒いでいる子供たちの会話をそのまま収めたような自然さで、不自然さがまったくない。

“目は口ほどにものを言う”とはよく言ったもので、接写から、姉のジンが、その場その場で抱く感情が瞳の奥に見てとれ、その心境の変化がこちらに伝わってくる。子役の演出は難しいとされるが、ソヨン監督がいったいどんな演出プランを組み、ふたりの子供とコミュニケーションをとってこの映像を作り上げたのか、ひじょうに興味を覚えた。ある意味、全編が奇跡的なカットといっていい。

演出もすばらしいが、ストーリーもまた興味深い。伯母の家に預けられた姉妹だが、肝心の母親は帰ってくる気配なし。やがて伯母の家にいることもできなくなったふたりは流転の生活を余儀なくされる。こうなると感傷的で悲壮感のただよう方向へ進むのがパターン。だが、ソヨン監督は彼女たちの悲惨な境遇や体験する絶望に目を向けるのではなく、そこから、ひとつの希望を胸に立ち上がる子供たちが根源的に持つ強さとたくましさに着目。妹を懸命に守ることを誓った姉の視点を主軸にした物語は、素晴らしい成長物語でもあり、人間賛歌のドラマにも仕上がっている。

最後に用意された姉妹の歌声は、悲しみの果てにたどりついた希望が感じられ、胸が熱くなった。

作品評価:★★★★ 水上賢治

コンペティション作品『木のない山』
■東京フィルメックス
11月30日(日)まで有楽町朝日ホールほかにて開催中

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