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夢を求めて大陸をさすらう中国の人々を描く『完美生活』【東京フィルメックス】
2008年11月29日 15時04分 [映画祭]
『完美生活』場面写真

今年のコンペの中国映画3本はまったく違うタイプの監督がそろったが、面白いことに3本とも描いているものは同じ、居場所のない人々についてである。3つ併せて見ると中国の現状がよく見えてきて実に興味深い。中でも実際に一番多いのは、『完美生活』に出てくる仕事を求め夢を求めて大陸をさすらう人々だろう。

景気の良い町を目指し、経済特区のある南へと向かう。まずは深センへ、そして隣接する香港へ。しかし入境許可が必要なので簡単にはいかず、香港は彼らにとって近くて遠い陽炎のような存在だ。また香港と大陸では使っている漢字が異なるため、大陸出身の女が仕事探しに苦労して結局水商売に流れるなど、このあたりの大陸と香港の違いを知っていないと、なぜラストで深センにいるかなど、少々わかりにくいかもしれない。

エミリー・タンはこれが2作目にもかかわらず、既に完成されたものを持っており、何をどう撮るべきかをよくわかっている。作品との向き合い方が深いのだろう。役者への演出力も高く、今後チャンスがあれば芸術映画だけでなく大きな商業映画も撮っていける実力を持った監督といえる。

この作品は構成がユニークで、香港で働くことを夢見る大陸の女リーと、離婚して香港から大陸へ戻っていく女ジェニーを、前者はフィクション、後者はドキュメンタリー風に撮っている。もともとはフィクション部分だけだったのを、必要性を感じて後にドキュメンタリー風部分を加えたそうだ。結果的に面白い出来にはなったが、2つの物語は完全に独立し、お互いにリフレクトして相乗効果をもたらすようにはなっていないため、この構成の意義が感じられず未完成な印象もまた拭えない。しかしそれが大きく気にならないのは、監督が急激な経済成長の中で抱く夢という題材に対し、主人公の希望や絶望ではなく、抑えられない孤独な情熱にフォーカスを当て、その行方を見事に描ききったからだ。

作品評価:★★★★ 木村満里子

コンペティション作品 『完美生活』
■東京フィルメックス

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