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気付くと引き込まれてしまう男女5人の恋愛悲喜劇【東京フィルメックス】
2008年11月29日 15時40分 [映画祭]

学生映画のため技術的には未熟な面が多々あるのだが、役者たちのバトルには最近見ない類いの熱い集中力が込められていて、気づいたときにはすっかり引き込まれている。今年の新人の中では、最も力を持ったひとりといえるだろう。

話は5人の男女の群像劇で、愛する人とつきあっている人がマッチしていない悲劇と喜劇が繰り広げられる。怒涛の台詞はまるで90年代のフランス映画の会話劇のようだ。浮気で気まぐれで自分勝手な登場人物たち、ずるさと本音のバトル、そして意外な形で戻ってくる結末。もしこれがフランスを舞台に翻案されても違和感はないだろう。いや反対に、友人同士で赤裸々に感情をぶつけ合わない、愛について真剣に語り合わない日本人にこの題材をぶつけた方がかなりチャレンジングだったといえるかもしれない。もし彼らの会話が真剣になればなるほど滑稽さが出ていれば上質のコメディになっただろうが、シリアスに描いたために愛についての哲学的意見が青臭く聞こえてしまった。どうもこの監督は語りたいことがたくさんあるようで、ちょっと盛り込みすぎなのだ。とくに台詞においては個々のキャラクターから発せられる言葉よりも、自分が語らせたいことを優先してしまうような向きがある。

しかし人物同士の関係を結ぶ複雑な糸がすべてピンと張っていなければ成立しないこの群像劇において、どこにも緩みのない完璧なトーンを作りあげ、オーケストラのごとく捌いた能力は特筆に値すべきである。最近の日本の若い監督たちは映像による世界観の構築に重点を置き、あまり役者の演技を演出しない傾向があるため、役者のトーンが統制されていない作品が実に多い。そんな中でこの役者への演出力に意地悪さが加われば、意外なものが底から出てくる監督になるかもしれない。『PASSION』が残酷な映画にもかかわらず残酷さを感じられないのは、狙いというよりも監督の人間性が出た結果なのだから。

作品評価:★★★+1/2  木村満里子

コンペティション作品『PASSION』
■東京フィルメックス

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