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ケチなスリ男が魅せる小粋なメルヘン【東京フィルメックス】
2008年12月01日 18時56分 [映画祭]
『文雀』場面写真

香港の一角に居を構える中年男ケイのもとに、ある朝、一羽のスズメがひょっこりとさまよい込んでくるところから映画は始まる。踊るような軽やかさで身なりを整えてから“出勤”する彼は、3人の仲間を引き連れるスリ・チームのリーダーだ。そんな4人それぞれの前に謎めいた美女が出現。あれよあれよと4人全員のハートを射抜いてしまった彼女は、裏社会の大物に囲われたわけありの女だった。

『エグザイル/絆』『マッド探偵』など快作を連打するジョニー・トー監督による哀愁の漂う犯罪コメディ。製作ペースが速すぎていったいどれが最新作なのかわからないほどだが、一作ごとにジャンルを変え、映画作りの愉悦を追求するその創作意欲には頭が下がる。サイモン・ヤム、ラム・ガートン(ラム・シューも味のある脇役で登場)といった気心の知れた男優陣と組んだ本作は、いかにも楽しく撮りましたという雰囲気が伝わってくる娯楽作で、トー監督作品の熱狂的なファン以外にもお薦めできる。

前半は路地裏、食堂、ビルのエレベーターや屋上といった新しいものと古いものが混在する香港のロケーションを巧みに活用し、スリ4人組と神出鬼没のファムファタールとの攻防戦を活写。そして雨に濡れた夜の市街地を舞台にしたクライマックスのスリ対決シーンではノワール調に転じ、主人公の行く手に咲き乱れる通行人の“傘”や、一瞬の勝負を左右する水しぶきの奇抜な使い方に驚かされる。

はみ出し男たちのロマンや友情というトー監督が好むエッセンスも健在。しかもいつもながら感情描写にまったく湿っぽさがなく、カゴの中の美女のために大勝負に挑むケチなスリ男の意地をさらりと描き、小粋で胸おどる“ちょっとイイ話”に仕上げている。そう、これは大人のためのメルヘンでもあるのだ。

作品評価:★★★+1/2  高橋諭冶

『文雀』
■第9回東京フィルメックス

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