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新宿のシンボルとして半世紀以上の歴史を刻んできた新宿コマ劇場。そのファイナルを飾るミュージカル「愛と青春の宝塚〜恋よりも生命よりも〜」の公開舞台稽古が12月1日に行われた。
人々に愛され続けてきた半円形舞台を覆う赤い幕が上がると、白い燕尾服にシャンシャンを持った男役たちのレビューがはじまる。舞台は一瞬にして華やかな宝塚歌劇の世界と化していった。時は1939年。第二次世界大戦が始まったこの年に、兵庫県宝塚市で生まれた女性だけの希有な劇団である宝塚歌劇団。その華やかな舞台の裏側で、トップスター・リュータンに一歩でも近づきたいと、厳しいレッスンに耐え、同窓生たちと競い合い、先輩に鍛えられながら舞台に情熱を燃やすタッチー、トモ、ベニの姿をコミカルに描いていく。舞台上でも、舞台裏でも希望に燃えてキラキラ輝く団員たちの姿が見どころだ。
第二部は、戦時下のタカラジェンヌの壮絶な人生を描く。冒頭で「戦時下に演劇は必要ない」と劇場が閉鎖される。しかし、諦めきれない団員たちは日本各地はじめ満州、樺太の前線にまで慰問公演に出かけていく。第一部では華やかで煌びやかだった衣裳とは一変、モンペ姿になった彼女たち。それでも歌い踊る姿は優雅で美しい。時代に翻弄されながらも「人々を楽しませたい」と歌い続ける彼女たちの健気な強さが胸を打つ。そして、本土攻撃もいよいよ激しくなり……。
この作品は、元宝塚トップスターのWキャスト公演としても話題だが、主要キャスト以外にも多数の元宝塚OGが“タカラジェンヌ”を演じているだけあって、歌もダンスも見応えがある。公開稽古では、紫吹淳が主人公・リュータンを演じたが、貫禄あるトップスター姿と愛する人の前で見せる可愛らしさを見事に演じ分けていた。また、彩輝なおがタッチーの苦悩を、星奈優里がトモの勝ち気さと哀しさを、紫城るいがベニの愛らしさをそれぞれ際だたせ、見事なアンサンブルを生み出していた。そして何より、彼女たちの思いを時に明るく、時に切なく、心に刻みつけたのが歌や音楽の存在だ。特に、“スキヤキの歌”は印象に残る。また、物語により現実味を与えている男優陣の存在も忘れられない。宝塚歌劇では見られない男優を相手に繰り広げられるタカラジェンヌの恋模様も必見。さらに、回転しながら上下する舞台など、コマ劇場ならではの舞台装置も楽しめる。
新宿コマ劇場は、宝塚の創始者の故・小林一三氏が設立した劇場であり、宝塚歌劇の公演も行われたタカラジェンヌとの縁も深い劇場。それだけにこの作品は、コマ劇場52年の歴史のフィナーレを飾るに相応しい作品と言えよう。
『愛と青春の宝塚〜恋よりも生命よりも〜』は、12月22日(月)まで新宿コマ劇場にて上演される。上記、キャストの他に、湖月わたる、貴城けい、大鳥れい、映美くららがWキャストで出演する。
取材・文:松原正美
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