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イジー・メンツェルの新作『英国王 給仕人に乾杯!』が、20日に封切られた。メンツェルといえば、1960年代、ミロス・フォアマンと並びチェコ・ヌーヴェルヴァーグの旗手だった人物だ。「技術の進歩により、スタジオを飛び出して外で自由に映画を撮れるようになった、新しく刺激的な時代」(メンツェル)だったそうだが、その直後に社会体制が変化し、新作が上映禁止の憂き目に遭う。やっと公開されたのはそれから30年以上の月日を経てからだ。しかし同じく圧力を受けたヤン・シュヴァンクマイエル同様、「共産主義時代は国が映画に予算をつぎ込み、製作から配給までしてくれましたからね。逆に言うと、あの時代は良かった」と言うから、長らく映画界にいる重鎮たちには、いろいろ複雑な思いがあるようだ。そんなメンツェルに、新作と、ヌーヴェルヴァーグについて話を聞いた。
新作『英国王 給仕人に乾杯!』は、そんな彼が通り抜けてきた激動の20世紀が舞台。ここ数年、ヨーロッパ各国では20世紀を顧みる映画が増加している。しかし、他の国が抑圧された社会の中でいかに信念を貫くか、そのために死を賭けられるかを描いているのに対し、チェコの特に彼の作品では、いかにひょうひょうと生き残るかを描いているのが興味深い。
「それはチェコ人の気質と関係があります。我々はヒーローを求めない国民性なのです。少し距離を置いて物事を見つめるタイプと言えるでしょうね」
そう、ドイツの侵略、ソ連の進攻、共産主義、資本主義と、さまざまな社会変化によって価値観を揺るがされた人々は、その中で決して変わらなかった恋愛や家族などを大切にしてきた。そこがヌーヴェルヴァーグの視点でもあり、メンツェルが常に変わらぬユーモアをもって描いているものでもある。
「チェコの人々はどんな時でもユーモアを失わない。なぜならユーモアがあることによって、人は自由を獲得できるからです。映画においてもユーモアがない描写は逆に真実味がなく、物事を浅く描いているように感じてしまいますね」
若手がその気質をどう受け継いでいるのか見たいところだが、日本で公開されるのは巨匠の作品ばかりと話すと、「良い作品はもちろんありますよ! チェコでだって若い日本人の作品は見られませんからね」とピシャリ。彼の作品の根底にあるプライドもユーモアも愛国心も、すべて監督自身が持っているもののようだ。
取材・文・撮影:木村満里子
『英国王 給仕人に乾杯!』
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