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2006年にトニー賞5部門、ドラマディスク賞6部門を受賞したブロードウェイ・ミュージカル『ドロウジー・シャペロン』。藤原紀香がミュージカルに初挑戦ということでも話題のこの舞台の日本版が1月5日、日生劇場で幕を開けた。
マンハッタンに住むさえないミュージカルオタクの男(小堺一機)が、1枚のレコード――1920年代のヒット作『ドロウジー・シャペロン』――をかけると、彼のアパートの部屋はいつしかミュージカルの舞台に……という滑り出し。そう、この物語は『ドロウジー・シャペロン』という架空のミュージカルを、その大ファンである男が語るという二重構造になっている。その内容に男がいちいち入れる突っ込みには現代ミュージカルへの皮肉が満載、ミュージカルファンならニヤリとしてしまう台詞が多い。
劇中劇『ドロウジー・シャペロン』の濃いキャラクター陣はかなりのもの。宮本亜門流のどこか過剰で原色溢れる演出がこの世界にピッタリだ。人気女優ジャネット(藤原紀香)と富豪の御曹司ロバート(なだぎ武)の結婚式。飲んだくれの花嫁の介添人、ドロウジー・シャペロン(木の実ナナ)。緊張しすぎな花婿介添人、ジョージ(川平慈英)。結婚式の主催者であるトッテンデール夫人(中村メイコ)とその執事のアンダーリング(小松政夫)。ジャネットのプロデューサー、フェルドジーグ(尾藤イサオ)らが出席する中、新郎の心を確かめようとジャネットが起こしたイタズラから、それぞれの思惑も絡まり式はとんでもない方向に……というストーリー。
結婚引退を夢見るものの、天性のスター気質が邪魔をしてしまうジャネットの藤原紀香がはまり役。「代表作にしたい」と意気込みを語っていたが、ナンバーを堂々と歌い上げ、見事な180度開脚とY字バランスも決める熱演ぶり。ドロウジー・シャペロン役の木の実ナナはさすがの貫禄と存在感で舞台を引き締め、川平慈英、なだぎ武らもあて書きかと思うほどのキャラクターだ。
しかし、この作品の真骨頂は後半になるにつれて二重構造とともに効いてくる。過剰なほどに華やかなミュージカルの世界とは裏腹に、男は現実世界の世知辛さをたびたび嘆く。悲壮感すら漂うその姿を見ながらいつしか気づく。舞台に私たちが心動かされるときは大抵、重すぎる現実に気持ちが折れそうな時ではなかったか? そして男も知っている。ミュージカルは夢の世界に"逃げ込む"だけではなく、現実世界をなんとか生き延びるためのカンフル剤として存在しているということ。皮肉をたっぷり効かせながらも、そのメッセージは何だか温かい。エンターテインメントはいつだって弱者の味方、こんな時代だからこそ必要なものなのだ。
東京公演は1月29日(木)まで日生劇場で、その後2月7日(土)・8日(日)長崎ブリックホール 大ホール、2月13日(金)〜15日(日)愛知県勤労会館、2月21日(土)・22日(日)富山・オーバード・ホール、2月28日(土)大阪厚生年金会館 ウェルシティ大阪 大ホールと各地をまわる。
取材・文:川口有紀
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