タレント ニュース
演 劇

劇団四季で活躍した石丸幹二が、退団後、ミュージカルに初出演することで話題の「ニュー・ブレイン 〜僕の中に春をいっぱい感じる〜」が3月11日、シアタークリエで開幕した。1998年にオフ・ブロードウェイで初演された作品で、作詞・作曲家ウィリアム・フィンが自らの体験をもとに描き出した物語。
ブロードウェイ・ミュージカルを手掛けることを夢見ている売れない音楽家・ゴードンの現実は、子ども向け番組でカエルの着ぐるみが歌う楽曲を作ること。そのメロディも浮かばず悩む彼を突如めまいが襲う。検査の結果、脳手術を受けないと危険な状態で、その手術も失敗の可能性もあるということが判明し……。“死”を目の前に突きつけられたゴードンの心の動きや、彼を取り巻く人々の愛情が丁寧に描かれていく。
大きなセットは病室のカーテンを思わせるリング状の白いカーテンのみ。赤い照明と黒く輝くグランドピアノというシンプルな舞台に小走りで登場した石丸は、ジーパンにくたびれたシャツで、ピアノを弾きながらカエルの歌をゲロゲロと歌いだす。気品ある役の印象が強かった彼の、新しい顔だ。ゲイの恋人に甘える顔、母親相手に拗ねる顔……再出発にふさわしい、今までになかった彼の魅力がそこかしこに溢れている。
舞台はカーテンを効果的に使い、現実世界と、ゴードンの幻想が入り混じって進行していく。シリアスなテーマを扱いながらも、明るい曲調がメインでユーモラス。ゴードンを悩ますカエルの着ぐるみ、強烈なキャラクターの医師や看護士たちなども楽しいが、手術後、意識が戻らないゴードンの脳内で繰り広げられるタンゴシーンなど、展開がユニークだ。だが奇天烈でありながら、嘘臭さは感じさせない。この明るさが人生に対する前向きな気持ちの表れであるのが素直に伝わってくる。実際、楽曲の多くはウィリアム・フィンが病室で生み出したものであるという。実体験の中で生み出された作品であるせいか、ドラマチックな出来事でありながら、リアリティある感情に共感を覚えるのだ。
ゴードンの恋人・ロジャーを演じる畠中洋、母親役の初風諄、ホームレスの女性を演じるマルシアをはじめ、樹里咲穂、パパイヤ鈴木、本間ひとしらもそれぞれ魅力あるキャラクターを楽しげに演じる。総勢10名、小人数のキャストは全員がコーラスもこなす。絶妙なアンサンブルで、実力のある演者ならではのフリーダムな楽しい空気をかもし出す。まとまったカンパニーが作品の魅力をさらに輝かせた。
何よりも爽やかな楽曲が魅力的。ゴードンが人生の“春”たる再出発を迎えるハッピーエンディングも、これから迎える季節にふさわしい。シンプルに力強く、高らかに謳いあげる人生讃歌。ウィリアム・フィンも駆けつけた初日は、やまない拍手に幾度もカーテンコールが繰り返された。石丸をはじめ、キャスト陣の嬉しそうな笑顔が印象的だった。
公演は4月29日(水・祝)まで、東京・シアタークリエにて。
関連リンク(外部リンク)
関連タレント
演劇のニュース もっと見る
-
演 劇
2022年07月15日 19時00分 更新「とんでもなく面白い」 舞台『ヒトラーを画家にする話』まもなく開幕へ -
演 劇
2022年07月15日 18時55分 更新ミュージカル『春のめざめ』開幕、抑圧の中で芽吹く性の行方 -
演 劇
2022年07月15日 18時50分 更新「今年は今年の面白さ」 KAATキッズ・プログラムが今年も開幕へ -
演 劇
2022年07月13日 13時00分 更新乃木坂46の久保史緒里が決して“笑わない”花魁役に -
演 劇
2022年07月12日 10時00分 更新円神・山田恭「翼を授かって自信に変えたい」、白鳥雄介の新作で