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今月1日に発表された「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009」オフシアター・コンペティション部門で見事グランプリに輝いた『SR サイタマノラッパー』。審査員長の高橋伴明氏に「青春映画として上質」と評された本作の主人公はなぜか田舎に住む“自称・ラッパー”。なぜ、脚本も手がけた入江悠監督はこの物語を描こうと思ったのだろうか? 公開直前に話を聞いた。
本作は“ラッパー”の名を冠してはいるが、登場するのはド田舎で実家暮らしを続けながらヒップホップ・スターを夢見るニートたち。そこにはヒップホップのミュージック・ビデオに登場するようなド派手な車も美女もなく、登場するのは軽トラックとあぜ道とブロッコリー畑だ。入江監督は「生まれは横浜なんですけど、3歳ぐらいからずっと埼玉で育ったので、地元ですね。上京して10年ほど経つんですけど“これで映画を撮るのは最後かもしれない”と思った時に、自分の原体験と地元の風景を描きたいと思った」と話す。
そこで入江監督が思いついたのは“ヒップホップ”だった。「もともとヒップホップが大好きなんですよね。熱い部分もあるんですけど、アホっぽい部分もあったりして、そのバランスが面白いんです」。本作の主人公IKKUは埼玉のフクヤ市から世界に向けてラップを発信。いずれは東京に出ようと思っている無職の男だ。そもそも“ラップを武器に田舎から脱出する”という物語は、ラッパーのエミネムが主演した自伝的映画『8マイル』など数多く存在するが、入江監督はまず“日本ならではの面白さ”に注目して本作の製作を始めたという。「海外の作品で描かれる労働環境とか貧困のようなシビアな環境が日本にはないんですよね。ただ、地方は空虚というか、実体のない“モヤモヤした感じ”があって、それって何なんだろうと思ったんです」。
撮影中、入江監督はずっと「地元にいた頃を思い出していた」と話す。「大学受験で浪人して予備校に入ってたんですけど、映画観てばっかりで、ずっとモンモンとしてて。あの頃のことはずっと忘れようとしてたんですけど。だから、この映画は地方から東京に出て、1回でも『しんどいな』って経験をした人に観てほしいです」
本作の最大の見どころは、関係者や、「ゆうばり映画祭」の観客の多くが絶賛したラスト・シーン。ヒップホップの特徴のひとつである“コール&レスポンス”の本質を見事に突いた奇跡的な場面だが、入江監督は「いろんなパターンを考えてはみたんですけど、最後はシンプルに人間の“気持ち”だけを出したかった」と語る。今後、語り継がれるべきこの結末を、ぜひ劇場で確かめてほしい。
『SR サイタマノラッパー』
3月14日(土)より池袋シネマ・ロサにて公開
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