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フランス映画界の重鎮コスタ・ガヴラスが、現在開催中のフランス映画祭のため来日している。1969年に傑作『Z』で若くして名声を得、ハリウッドでも活躍した彼が76歳にして挑んだ題材は、若い頃からずっと撮りたかったという移民についての物語である。
それにしても最近はいかにも重鎮という作風だったのが、今回は何と若々しいのだろう。実にみずみずしく、エネルギッシュ。コスタ・ガヴラス久々の力作である。「私が若返ったのなら嬉しいですけれど(笑)。今回はテーマに合わせ、軽さのある、いわば太陽のように輝くスタイルを選び、今までの作品とは技術面も撮影の仕方も脚本の書き方も変えたからではないでしょうか」。
新作『西のエデン』は、海を渡ってヨーロッパに不法入国した主人公が地中海のリゾートに泳ぎ着き、パリを目指して旅をしていく物語。しかしこれがロードムービーというよりも、神話の冒険譚のような作品なのだ。ヨーロッパの現在の姿を映し出す社会派映画でもありながら、同時にわくわくする面白さがある。「移民は悲劇を生きているけれども、同時に希望がある。彼らの、夢を何が何でも掴もうとするひたむきな強さを描きたいと思いました」。
苛酷な旅の中、主人公の心を支えたのは、よくある故郷の家族の写真ではなく、パリに来たら会いに来いと言ったマジシャンの一言だったというのが、とても真実味があり、何とも切ない。「家族の写真ってよくありますよね(笑)。移民が描かれるとき、必ず過去との関連で描かれ、未来との関連で描かれることはない。でも彼らは未来を探しにやってくるのです。この主人公は言葉がわからないため、自分に対する人々の行動でその国を理解しようとする。つまり自分が出会った人々を通して世界を発見していくのです。ヨーロッパの方も人口の高齢化の問題があり、実際若い血、新しい血を必要としています。ヨーロッパ文明は強い文明ですから、自分たちの一部に外国からきた人を統合することができるはず」と力説。そう、彼自身ギリシャ人でありながら、今やフランス映画界を代表する巨匠になった移民なのだ。
最後に、題材に関係なく常に作品にスケール感がある理由を尋ねると、「それは世界というものが広いからです(笑)」とニッコリ。軽やかでチャーミングな巨匠であった。
『西のエデン』はクロージング作品として、15日(日)20時40分より上映される。
文:木村満里子
【フランス映画祭2009】
期間:3月12日(木)〜15日(日)
会場:TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
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