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「フランス映画祭2009」で最も光っていた作品『美しい人』。17世紀の仏古典『クレーヴの奥方』を大胆に翻案し、舞台を現代の高校に移して青春ものとして甦らせたユニークな作品である。監督のクリストフ・オノレは、日本では『ジョルジュ・バタイユ ママン』(2004)1本しか公開されていないまだ30代の新鋭。こういう監督の作品が見られるのも、フランス映画祭ならでは。来日した監督に話を聞いた。
「大統領選のときに候補者だったサルコジが教育問題について語っていて、『学校で「クレーヴの奥方」を読んでも何の役にも立たない。若者が古典から学ぶことは何もない』というバカげたことを言ったので、じゃあ『クレーヴの奥方』で若い人のラブストーリーを作って、現代にも通じる普遍的なものがあると証明してやろうと(笑)」。
原作は、主人公が夫への貞節を守るために愛する人を拒むという物語。しかし本作では10代ゆえの恋愛への執着、恐れに置き換えられている。「原作では恋愛感情を大人の視点から分析しているけれど、主役が高校生になると高い倫理性はそぐわない。そこで逆に新しい視点、つまり若者であるがゆえの残酷さを表現したことで、新鮮さを吹き込めたと思う」。
10代の登場人物たちは未経験の情熱に翻弄され、それぞれ答えを出していくが、頭の中の結論だからといって、それが嘘とも言えなく、強い感受性ゆえに見いだした彼らなりの真実として描かれているところが素晴らしい。「主人公は人生と恋愛を同一視しているんです。恋愛も人生も同じで必ず移り変わり、その先に死があると考えている。そういった理想と現実の恋愛の違いを暗喩的に語りたかった。僕の映画では思春期に経験する初恋というテーマがいつもあるんですが、それは初恋というものが後々の人生にどんなに重要に関わってくるか、初恋の段階では決して自覚していないものだからなんです」。
ところで現在のフランスの10代についてはどんな感想が?「美に対する観念が変化しましたね。今の若者は雑誌とかの影響で、自分が美しく見られたいという意識がすごく強い。それは僕が若いときにはなかったものです」。
素晴らしい作品だけに、日本でも正式に公開されることを期待したい。
文:木村満里子
【フランス映画祭2009】
期間:3月12日(木)〜15日(日)
会場:TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
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