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10日、シェイクスピア幻の名作に、片岡愛之助と中村獅童、黒木メイサという面々が挑む舞台「赤い城 黒い砂」が、11日の東京公演初日に先駆け公開舞台稽古を行った。
シェイクスピア作品は長らく全37作といわれてきたが、近年の研究の結果、新たに3作が加わり現在は全40作とされている。その追加3作のひとつ、ジョン・フレッチャーとの共作である悲喜劇『二人の貴公子』を、今年岸田國士戯曲賞を受賞した若手劇作家・蓬莱竜太が骨太な人間ドラマとして翻案したのが本作。蓬莱は、舞台を中世の中東を思わせるエキゾチックな異国の地におきながら、現代的なテーマを力強く浮かび上がらせた。
物語は絶えず争いを繰り返している赤い国と黒い国が舞台。黒い国にはジンクとカタリというふたりの英雄がいる。無二の親友である彼らの活躍で黒い国が優勢と見えたが、赤い国にも勇猛さで名を馳せる美しい王女ナジャがいた。3人が刀を交わす中、赤い国が導入した強力な新兵器が戦局を一変させる。捕虜となったジンクとカタリだが、ナジャにカタリが恋をしたことからふたりの間には亀裂が入り……。
ジンクには片岡愛之助。理知的な顔立ちが冷静沈着な役どころに似合うが、親友を裏切り、名を変えナジャの親衛隊長になり野心を募らせていく過程で見せるむき出しの汚さも魅力的。自信家で荒々しいカタリは中村獅童。少年めいた奔放さを見せる前半から、苦渋を舐め這い上がった者が持つ精神的強さを身につけた後半までの変化を鮮やかに見せた。同い年の歌舞伎俳優ふたりが、好対照の存在感で火花を散らし、見ごたえ十分。王女ナジャは黒木メイサが演じる。美しさ、凛々しさ、眼差しの鋭さなどまさにはまり役。3人が見せる華麗な立ち回りも見どころだ。カタリを脱獄させる牢番の娘ココは南沢奈央。純粋さからくる狂気を、初舞台の南沢がひたむきに演じた。
物語は進むにつれ、シェイクスピア的世界から遠ざかり生々しさを帯びていく。赤と黒、二国間の闘いを舞台にしながら、蓬莱はさらに“青”を象徴的に配置した。青い服の武器商人が売りつける兵器は次第に強大になり、土地を奪い合っていたはずの闘いは、その土地をも焼き尽くす。戦闘も、冒頭は翻るマントも美しく剣を交し合っていたものから、武器は銃やライフルに、服は戦闘服に似た形のものにと変化。もはやどちらも勝者ではない程に滅ぼし合い、戦争は終わりかと思わせたところでさらに第三勢力、“青”の国を登場させる皮肉。現実は二項対立で語ることなどできず、また、切り取られた物語の外にも争いは続いていくのだ。何故人は争うのか、古来より繰り返し問われ続けたその形而上学的問題は、すでに問うている場合ではない。人である限りどこにでも争いはあるのだ。それを認めた上で我々はどうすべきなのか。現代に生きる私たちが考えなければいけないリアルな問いが、新鮮かつ力強い出演陣の熱演でドラマチックに描き出されていく舞台に一瞬たりとも目が離せない。
公演は4月25日(土)まで、東京・日生劇場にて。チケットは現在発売中。
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