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3年前、『麦の穂をゆらす風』で見事パルムドールを手にしたケン・ローチ監督が、新作を引っさげてまたもやカンヌを訪れた。

コンペ上映された『Looking for Eric』は、思い切り笑わせ、ほろっとさせてくれる元気の出るコメディドラマ。マスコミの反応は素晴らしく「パルムドールか？」「いや、コメディだから不利かも」などという会話も、ジャーナリストの間で飛び交った。

郵便局員のエリックは、2度の離婚を経験したシングルファザー。ティーンエイジャーの子供たちは手に負えず、人生に楽しさを感じられないでいる。彼にとってのヒーローは、彼が愛するマンチスター・ユナイテッドの伝説的プレーヤー、エリック・カントナ。いつしかカントナは彼の白昼夢に現れ、彼の話を聞いてくれたり、はげましてくれたりするようになる。そんなある日、彼の息子が、不良少年のトラブルに巻き込まれ…。

カントナを演じるのは、エリック・カントナ本人。映画の中には、過去の試合の名場面もいくつか登場する。記者会見では、ヨーロッパのジャーナリストにカントナへの質問が殺到、彼の“伝説”ぶりを証明した。「撮影中は、カントナとサッカーをしたりしたのでしょうか？」と質問されたローチ監督は、「僕は人生の中でいくつもバカなことをしでかしてきたけど、エリック・カントナを相手にサッカーをするほどにはバカじゃないさ」と回答。場内は爆笑に沸いた。同作品の日本公開は未定。

取材・文：猿渡由紀
撮影：若山和子/Jean-Louis TORNATO

■第62回カンヌ国際映画祭
5月13日〜5月24日まで開催

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