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6月20日(土)より『キェシロフスキ・プリズム』と題して、1996年に54歳で急逝したポーランドの監督クシシュトフ・キェシロフスキの特集上映が開催される。『ふたりのベロニカ』や『トリコロール』3部作など劇場公開された長編10作とテレビ・シリーズ『デカローグ』全10話、そして短編3作という、これまで日本で上映されたことのある23作すべてを一挙上映。加えて、なんと権利問題によって長年未公開になっていた初期の作品5作も公開されることになった。しかもこれらはドキュメンタリーからフィクションへ移行していた時期の、まさにキェシロフスキの原点といえる作品ばかり。
イチオシは、壊れかけた男女の夜から朝までの物語『地下道』(1973)だ。実験的な試みに映画の奇跡が降りてきた傑作で、夜の深まりとともに密度が濃くなり朝方にぽうんと弾ける、その計算内と計算外の見事な合体に、フィクションとドキュメントの素晴らしき融合を見る。また、ある暴動事件の再現ドキュメント『短い労働の日』(1981)も素晴らしい。コスタ・ガヴラスの『Z』を思い起こさせるスリリングな政治劇で、ほとんど執務室だけで繰り広げられる物語にもかかわらず、白熱したやり取りに目が一時も離せない。
そのほかでき婚した学生カップルが子供を出産するまでを追う『初恋』(1974)、オペラ座の裏側が赤裸々につづられる自伝的作品『スタッフ』(1975)、刑務所帰りの男のささやかな夢と挫折を描く『平穏』(1976)など、理想と現実の狭間で揺れる人々は、まさに彼がその後の作品でフォーカスを当てていたものである。この5作品は権利関係上DVD発売できない可能性が高いため、ぜひともこの機会に観ておきたい。
また彼の軌跡を追ったドキュメンタリー『スティル・アライヴ』も同時公開。ジュリエット・ビノシュやヴィム・ヴェンダースなどの話も興味深いが、友人やスタッフによる逸話から70〜80年代のポーランドの体制下で、どのように映画を撮っていたかがわかり、作品を理解する助けになる。
これほど大々的なキェシロフスキの特集上映は日本初。28作中ハズレが1本もなく、どれも力強さに満ち、特別な体験をさせてくれるものばかりだ。
文:木村満里子
『キェシロフスキ・プリズム』
6月20日(土)公開
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