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いまやそれぞれのメンバーが映画にドラマ、舞台にと活躍中の俳優集団D-BOYS。今年はラサール石井を演出に迎えたコメディ『NOW LOADING』、2008年に上演され好評につき再演となった青春スポーツ物『ラストゲーム』と、テイストの異なる芝居でその成果を見せてくれた彼ら。今年3本目となる『アメリカ』(赤堀雅秋作・演出)は、初の小劇場作品でリアルな芝居が要求される演目。D-BOYSから柳下大、加治将樹、鈴木裕樹、荒木宏文、山田悠介が出演するその初日が、9月29日、東京・本多劇場で幕をあけた。
現代の東京。築30年のボロアパートの一室で、今日も加藤(柳下)、八田(加治)、池田(鈴木)、森(植松俊介)ら劇団員たちは次の公演に頭を悩ませていた。加藤と一緒に故郷を出て暮らしている小田島(黒田大輔)はそんな彼らを羨ましく思うが、未来のない劇団活動に絶望しかけている加藤たちには焦燥感しかない。時は経ち、現在。姿を消した加藤の部屋に、彼の兄(荒木)が部下の佐々木(山田)と共に遺品整理に訪れる。生理的に合わなかったと悲しむ様子もない兄に、苛立ちを隠せない友人たち。過去と現在が同時に展開してゆく中、兄と弟の気持ちが交差するときは来るのか……。
劇団THE SHAMPOO HATで作・演出を手掛ける赤堀雅秋の『アメリカ』は、外部でも再演を重ねている小劇場界の名作。約2時間の上演中ほとんどは、得体の知れない焦燥感と意味のない空笑い、ささいな日常のやりとり。劇団の脚本を担当する加藤役・柳下は、ふと黙り込んだ背中に鬱屈を思わせて自然な存在感。ひと足先に劇団を辞める池田役・鈴木は、線の細さに人の良さを共存させて地に足の着いた人物像となった。空笑いで現実から逃避しようとする加治のリアリティ、加藤の兄を見つめる山田のまっすぐな眼差しが印象的。荒木の少々ミステリアスな表情がラストの兄弟の結びつきを表す場面で一気に反転するさまは、本作の核を示すものとして鮮やかに心に残った。
公開稽古終了後の会見では、「一度自分をカラッポにして相手とのやりとりで出てくるものを大切に」(柳下)、「登場人物の誰かに共感してもらえる作品」(加治)、「感情の動きを自分の範疇でやらないということに苦労した」(鈴木)、「稽古場でも荒木さんと絡んで、普段の人間関係から役作りを」(山田)と、それぞれの苦労を語ったD-BOYSたち。「空気感や表情、声のトーンなどで表現する舞台。俳優集団としての僕たちを観て欲しい」(荒木)という言葉に全員がうなずくひと幕も。等身大の彼らが、ザラザラとした感触のままに伝わる本作。長丁場の公演を経て、その姿がどう変化していくのか見守りたい。
東京公演は、10月3日(日)まで本多劇場、11月3日(水・祝)から11月7日(日)まで紀伊國屋ホールにて。その他、10月19日(火)・20日(水)に愛知、10月22日(金)から24日(日)まで大阪、10月31日(日)に新潟公演も予定。東京を除く各地の公演チケットは現在発売中。
取材・文:佐藤さくら
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