あなたが好きなタレントの
出演情報をメールでお知らせ♪

タレント ニュース

演 劇

老若男女34名のキャストが描き出す、何気ない日常にある幸せ
2010年12月24日 15時14分 [演劇]
稽古場より。写真手前に、小堺一機
稽古場より。写真手前に、小堺一機

ソーントン・ワイルダーの名作『わが町』が、東京・新国立劇場 中劇場にて、1月13日(木)より上演される。開幕まで1か月をきった12月某日、稽古場を取材した。

新国立劇場演劇「わが町」の公演情報

稽古場には総勢34名のキャスト、さらにスタッフまで含めると50名近い人数が集うが、本作の質感のせいか、不思議な落ち着きが全体を覆っている。演出の宮田慶子の一声により、この日の稽古は第1幕の通しから行われた。本作は全3幕で構成され、“わが町=ニュー・ハンプシャー州、グローヴァーズ・コーナーズ”の1日、恋愛と結婚、そして死が描かれていく。とはいえそこでは、何か劇的な事件が起こるわけでもない。ふたつの家族を中心に、普通の人たちの、普通の日々が描かれていくだけだ。それは宮田が稽古中に語った、「別に歴史がやりたいわけじゃない。そういう佇まいの人がやりたい」という言葉からも明らかだろう。

それでもこの作品が“不朽の名作”と言われるのは、その劇構造の妙にある。舞台監督役が狂言回し的な立場となり、彼の語る中で物語が展開されていくのだ。今回、舞台監督を演じるのは小堺一機。小堺は冒頭から膨大なせりふ量、そして観客をこの二重構造の世界に導くという、非常に重要な役割を担う。だが小堺は、あたたかい語り口と絶妙な間による笑いで、その難題を次々とクリアしてみせる。それでも宮田は、「みんなが意識的にスタートを切らないと何だかカッコ悪い。芝居ごっこにはしたくない」と一喝。全キャストに対し、さらなる奮起を促す。ギブズ家、ウェッブ家の両親を演じるのは、それぞれ相島一之と斉藤由貴、佐藤正宏と鷲尾真知子。4人のこれぞベテランと言える安定感は、すでに本作の空気感にもしっとりと馴染んでいる。またギブズ家の息子ジョージ役の中村倫也と、ウェッブ家の娘エミリー役の佃井皆美もいい。特に佃井は1500人以上のオーディションを勝ち抜いただけあり、人を惹きつける何とも言えない魅力がある。それが時に「頑張り過ぎる」という宮田からの注意にもなるが、それに負けない前向きさを見せ、本番への期待感を高める。

さらに本作にはオーディションで選ばれた15人の若い役者と、平均年齢71歳というさいたまゴールド・シアターのメンバー8人も参加。彼らの厚みと意外性が、作品に大きな効果を発揮することは間違いない。そして稲本響による音楽とピアノの生演奏が、それらすべてを優しく包み込んでいく。

稽古場から感じたのは、アメリカの片田舎の人々の日常が、なぜこんなにも胸を打つのか? ということ。おそらくそれを考えることが本作を楽しむ一番の理由であり、宮田を始めとするこのカンパニーならば、きっと素敵な答えを劇場に用意してくれるはずだ。公演は1月13日(木)から29日(土)まで。チケットは現在発売中。

取材・文:野上瑠美子

チケットぴあ

関連タレント

演劇のニュース もっと見る

最新ニュース もっと見る