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第61回ベルリン映画祭が現地時間の19日に閉幕式を迎え、イラン映画の『別離、ナデールとシミン』が金熊賞、男優賞、女優賞を独占した。
本作は離婚に直面した家族の姿を通して、現代イラン社会の問題を描いたもの。イランといえば、今回の審査員のひとり、ジャファール・パナヒがイラン政府の拘束により参加できなくなったことが話題を呼んだが、映画祭側は最後まで彼の席をもうけて抗議を続けた。
審査員大賞に選ばれたのは、ハンガリーの巨匠ベラ・タール監督の『トリノの馬』。哲学者ニーチェを狂わせたと言われる馬とその御者をモチーフに、モノクロの映像と効果的に用いられた音響が深い味わいを残し、国際批評家連盟賞も受賞した。
コーエン兄弟の『トゥルー・グリット』で華々しく開幕した今年のベルリンは、コンペに若手作家が目立った。ケビン・スペイシー主演で、金融業界の内幕を描いたJC・チャンドールの『マージン・コール』や、レイフ・ファインズ監督・主演でシェイクスピアを現代的に脚色した『コリオレイナス』は、ともに長編初監督作ながら見応えは十分。ただしスターの出演作であることが逆に不利となったのか、賞には該当しなかった。審査員長のイザベラ・ロッセリーニをはじめとする今年の審査員団は、インディペンデントな作品にエールを送る、ベルリンの伝統を継承してみせた。
アウト・オブ・コンペで話題を呼んだのは、2本の3Dドキュメンタリー。ヴィム・ヴェンダースが振付家ピナ・バウシュにオマージュを捧げた『ピナ』と、ヴェルナー・ヘルツォークがフランスの洞窟を訪れた『Cave of Forgotten Dreams』で、ともに3Dの特性を生かしたユニークな作品になっている。またオスカーの12部門にノミネートされた『英国王のスピーチ』も招待され、コリン・ファースとヘレナ・ボナム・カーターが顔を揃えて熱狂的な拍手で迎えられた。
今年はコンペに日本映画はなかったものの、堀北真希が深川栄洋監督と参加した『白夜行』など、計7本がパラレル・セクションに並んだほか、岩井俊二がアメリカで撮影をした『バンパイア』も出品された。そのなかで瀬々敬久の『ヘヴンズ ストーリー』が、国際批評家連盟賞と最優秀アジア映画賞をダブル受賞する快挙を果たした。
■おもな授賞作品
審査員大賞=「トリノの馬」(タル・べーラ監督)
監督賞=ウルリッヒ・ケーラー(スリーピング・シックネス)
芸術貢献賞・撮影=ボイチェク・スタローン(ザ・プライズ)
同・美術=バーバラ・エンリケス(同)
脚本賞=ジョシュア・マーストン、アンダミアン・ムラタイ(血の償い)
アルフレッド・バウアー賞=「我々でなければ誰が」(アンドレス・ファイエル監督)
文:佐藤久理子 写真:Kazuko Wakayama
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