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演劇集団キャラメルボックスの公演、「キャラメルボックス2014サマーツアー・プレミアム『涙を数える』」が7月30日に東京・サンシャイン劇場で開幕した。幕末の名もなき若者たちを描いた『TRUTH』は、この夏3度目の公演を迎える人気作。この『TRUTH』と今回交互で上演される『涙を数える』は、そのなかで主人公に勝るとも劣らない思い入れを抱く観客が多いという敵役・長谷川鏡吾の9年前を描いた、いわば“TRUTHエピソード0”的な物語だ。若手実力派の辻本祐樹、池岡亮介が客演し、物語に華を添える。
上田藩士である長谷川鏡吾(多田直人)は、8歳で父が公金横領の罪で切腹してからというもの、母とふたり、貧しい暮らしを強いられてきた。幼馴染の舟橋明一郎(辻本)が父(西川浩幸)を斬って逃げたのをきっかけに、目付役の南条(岡田達也)とともに江戸へ向かう。明一郎を探し出し、斬ることができれば出世の道が開けるが、明一郎の妹(原田樹里)は鏡吾を必死に止める――。
客席に向かって下る、ゆるやかな傾斜のついたシンプルな舞台。そこで重い闇を背負った鏡吾と、どこまでもまっすぐに育ち、つねに鏡吾のことを思いやる明一郎の対比が鮮やかに描き出される。江戸で鏡吾らの世話役として登場する大佛(おさらぎ)聞多役の池岡が実に軽やかで、深刻な物語をぐっと柔らかくしている。裏を返せば、客演のふたりがのびのびと演じられるだけのしっかりとした土台を劇団の面々が作り出しているともいえるだろう。
明一郎と、大佛と、南条と、頻繁に繰り広げられる鏡吾の殺陣も見ものだ。それぞれの性格が反映されたかのような太刀さばきに対し独学の剣術で立ち向かう鏡吾の姿に、この物語の主題が集約されているのかもしれない。カーテンコールで汗をしたたらせながら、笑顔を見せていた多田はこの作品への手応えを感じている様子だ。
旧習に縛られた大人たちの姿勢に疑問を持ち、この世を変えていこうとする若い世代。現代ではめったにみられないこの関係性は、だからこそいま必要とされる物語なのだろう。公演前、多田は「個人的に『TRUTH』初演の、熱のこもった感じが大好きだった」と語った。『TRUTH』の前日譚として生まれた新作『涙を数える』は彼の憧れた熱を帯び、しっかりとした一個の新作としてみごとに成立していた。それでいて若者たちの強い思いが観る者の心に清涼な風を運んでくるような、夏にぴったりの作品だ。
公演は8月16日(土)まで。サンシャイン劇場で交互上演中の『TRUTH』は8月17日(日)まで上演する。チケット発売中。
取材・文:釣木文恵
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