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世界的演出家兼パフォーマーであるロベール・ルパージュの戯曲を吹越満が独自の視点で演出、2012年の初演時に高い評価を得た『ポリグラフ』。その再演が10月19日、東京で幕を開けた。キャストは吹越と、映像に舞台にと幅広く活動を続ける太田緑ロランス、そしてダンサーであり俳優としても活躍中の森山開次という、初演と同じ3人。前回の稽古時には「映像を編集するように場面ごとを作り、それを構築していった」と吹越が語る本作が、今回はどんな表情を見せるのか。残暑が残る先月、稽古場の3人を訪ねた。
物語はカナダの都市ケベックを舞台に、駆け出しの女優ルーシー(太田)と犯罪学者デイヴィッド(吹越)が地下鉄の飛び込み事件をきっかけに親しくなるところから始まる。ルーシーの友人でウェイターのフランソワ(森山)の店に出かけたふたりだが、デイヴィッドは以前関わったポリグラフ(嘘発見器)のことが、ふいに頭をよぎる。3人の関係が奇妙にねじれてゆくにつれ、かつて起きた凄惨な殺人事件が浮かび上がる。点と点が線になってつながったとき、そこに現れたものとは…。
初演の舞台では〈ソロアクトシリーズ〉で身体表現を探求してきた吹越らしく、3人の身体能力を最大限に生かすような動きと計算され尽くした映像や照明とが共鳴し、スリリングな舞台を作りだしていた。だが再演に際しては、「ただ初演をなぞるのではなく、初演の続きをやらせてもらう気持ち」と吹越は話す。太田も「初演は本番中から千秋楽の打ち上げまで、3人で毎日“ここはこうしたらいいのでは”と意見を言い合っていました。だからそこで気になっていたことを、こうして再演でやれるのが幸せですね」と語る。森山もうなずきながら、「初演の時はフランソワが素の自分に入り込んできて、稽古帰りの電車のホームでは劇中と同じ感覚になることがよくありました」と、本作が特別な存在になっていることを明かす。
再演の稽古場でも3人の“生みの苦しみ”は続いている様子だったが、吹越は今回、パリの日本文化会館で初日を迎えることをあえて選んだという(パリ公演は10月上旬に好評を得て終了)。「ただ、パリ公演を終えたら、今度は東京公演のためにまた作り直すつもり。さすがに一からではないけどね」と笑う吹越を見て、「なんてストイックな人だろうと感動します(笑)」と言いつつ、揺るぎない信頼を寄せている表情の太田。森山が「フランソワはゲイですけど、意外とフツーなんですよ。おかしいのは(吹越演じる)デイヴィッドのほうかも」と現実と登場人物を混ぜて話すと、ふたりが笑いだすひと幕も。抜群のチームワークで見せる、繊細で美しい、練り上げられた舞台に期待。
公演は10月19日(日)から11月2日(日)まで東京芸術劇場 シアターイーストにて。
取材・文 佐藤さくら
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