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仕事にも恋愛にも疲れたひとりの女性のもとに、ある日突然、白鳥が飛び込んできて若い男性に変身したら……。思いがけない出来事から始まる人生の再生を描く『スワン』が日本初上演される。この大人のファンタジーにどう取り組んでいるのか。主演の一路真輝、演出の深作健太に聞いた。
エリザベス・エグロフによる『スワン』は、ニューヨークでも好評を博した珠玉の小品。主人公の女性・ドラとその愛人・ケビン(大澄賢也)、人間になった白鳥(細貝圭)の3人だけで、ドラマが進んでいく。稽古場には今、その3人の熱気が渦巻いているらしい。「台本を一読したイメージでは、暗く静かな空気のなかで展開するかと思っていたんですけど、意外にも、とても躍動的なお芝居になっているんです」(一路)。「3人の身体性を活かしていくと、動きの多い芝居になってきて(笑)。その結果、言葉のやりとりもどんどん面白くなって、世界がすごく広がっているんですよ」(深作)。
だから、単なる男女の三角関係というところを飛び越え、精神宇宙を旅するような物語にもなっている。「ドラは年齢を重ねた女性なら誰もが持っている悩みに直面しているんですけど、ひとつの台詞や何気ないやりとりの裏にもいっぱい意味があるんですね。だから、いろんな解釈をしながら、私もどこまで自分を解放できるか、挑戦していきたいと思っています」(一路)。そんな等身大の女性を演じる一路は、深作から見てもキュートだそう。「僕がタカラヅカを初めて拝見したときに、『ベルサイユのばら』のオスカル役を演じられていたのが一路さん。僕にとっては憧れの人なんですけど、本当にかわいらしく思えてきて(笑)。ときに母親のような包容力もあり、ドラが非常に多面的で魅力ある女性になっているんですよ」(深作)。
3人だけのこの濃密な芝居は、各地公演いずれも小、中規模の劇場で上演される。「舞台と客席が近い空間で、俳優さんの持ってらっしゃるいいところをそのままお届けできたら」と語る深作。そして一路も、「目線ひとつ、ため息ひとつで、何かが伝わるような空間にずっと憧れてきました。そこに自分が立っていることを想像すると、ちょっと興奮します」と意欲的だ。深作によると、白鳥は“天使”なのかもしれないらしい。上演されるのは12月。目の前で繰り広げられるめくるめく物語は、まさにクリスマスの贈り物になるかもしれない。
公演は12月6日(土)・7日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、12月17日(水)から23日(火・祝)まで東京・紀伊國屋ホールにて。チケット発売中。
取材・文:大内弓子
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