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2015年1月の閉館を前に、青山円形劇場プロデュースによる「青山演劇フェスティバル」が復活。そのラストを飾る演目『夕空はれて〜よくかきくうきゃく〜』が、12月1日、同劇場にて開幕した。
青山円形劇場プロデュース『夕空はれて〜よくかきくうきゃく〜』チケット情報
本作は別役実が脚本を手がけ、1985年に初演された傑作不条理劇。それをケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が潤色・演出を担い、KERA作品常連組とともにナンセンスコメディへと仕上げた。同フェスティバルでKERAが別役作品を演出するのは、1997年の『病気』以来2度目。
舞台中央に浮かぶ扉の開いた檻。舞台上には7つの椅子が円形状に並べられている。椅子のひとつには花束が。するとそこにサラリーマン風の男が現れ、後からやって来た喪服の女と包帯を巻いた男に声をかけられる。ゆうべある人がライオンに噛み殺され、さらにその前の晩には包帯の男が耳を喰いちぎられたのだと。さらにふたりの姉妹、飼育係も現れて……。
メインの出演者は7人。前半は6人の男女が、主にライオン――ある人にとってはそうではないのだが――に噛まれたくないという会話を繰り返している。だが彼らは本当に噛まれたくないのか、実は噛まれたいのか。答えの見えないやり取りは、一見するとただの不毛な会話の連続。しかしその底辺には確実に何かがうごめき、彼らの関係性に変化をもたらしている。
この中でひとり常識的な考えのもと、必死に対話を努めようとするのは、仲村トオル演じる男1。その真っ直ぐで時に過剰なほどの演技は、他の5人に比べると異物に映り、それが笑いへと繋がっている。山崎一、犬山イヌコ、緒川たまき、奥菜恵、マギー演じる5人は、多少つじつまの合わないことであっても、自らの理論のみで語り続ける。こういった役どころに重要なのが細やかな間やニュアンスであり、彼らの巧さがまた、さらなる笑いを生み出している。そして2幕に新たに登場するのが、池谷のぶえ演じる男4。彼の存在が、事態を大きく変えていくのである。
別役の脚本はもちろん面白いのだが、非常に危険でもある。この不条理極まりない状況は、演出により見え方がまったく異なるためだ。しかしナンセンスを得意とし、別役を敬愛するKERAは、コメディとしての笑いを重視しつつ、結末へと向かうにつれ緊迫したドラマを構築していく。さらにKERAの大きな武器は、円形劇場の舞台機構を知り尽くしているということ。円形劇場の面白さを改めて感じられた作品だけに、その閉館が非常に惜しまれる。
公演は12月14日(日)まで。
取材・文:野上瑠美子
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