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元高校球児が再び甲子園を目指す実在の大会“マスターズ甲子園”を基に人間ドラマを綴った、直木賞作家・重松清による原作の映画化『アゲイン 28年目の甲子園』で、主人公の坂町に扮する中井貴一。実は当初、オファーを断っていたという。そこには俳優、中井貴一のこだわりがあった。
「野球はやったことがないのでお断りしたんですけど、何度もお声掛けいただきまして。大森(寿美男)監督は見せたいのは人間描写だと。だからお願いしたいと。とても光栄でした。でもたとえば僕はテニスをやっていましたが、ラケットを持った瞬間に、本当にやっているか否か分かるんです」と中井。
「僕は映画というフィクションの中で、大きなウソはついても、小さなウソはついちゃいけないと思っているんです。野球の分量がいくら小さくてもそこに現実性がないと全部がウソになってしまう」。中井を動かしたのは、本作の野球監修を務めた元巨人の大石慈昭だった。「中井さんのような人にこそやってもらいたいと。そして『野球に関しては、僕が一切恥をかかせません』と言ってくださったんです」。出演を決意した中井だったが、「恥をかかせないということは、つまり待っていたのは特訓だったわけです」と苦笑い。「炎天下の中で猛特訓しました」。そのかいあって、本編は吹き替えなし。見事なライナーキャッチも披露している。
また、中井はタイトルの“アゲイン”の別の意味に触れた。「この作品では子どもとの関係性を見つめ直しています。そこにもアゲインがある。人には、日常の中で常にやり直せるきっかけがある。本作ではそのひとつとして親子関係を描いているのだと思います」。そして現在、53歳となり、俳優生活も30年を超えた中井は「人生の下り坂が見えてくるのが50という年です。これから先の人生、50を過ぎたからこそ、逆に攻撃的でありたいと思っています」と語る。本作での挑戦のみならず、これからも名作を生み出し続けるだろう確信を持った。
『アゲイン 28年目の甲子園』
1月17日(土)公開
※取材・文・写真:望月ふみ
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