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作詞家・森雪之丞が「いつかロックオペラを自分で作ってみたい」という情熱をもって書き上げた処女戯曲に、盟友・布袋寅泰が約20曲の楽曲を書き下ろし、2012年に熱狂を巻き起こした『サイケデリック・ペイン』。この伝説の作品がフレッシュなキャストを得て4月4日、東京・天王洲 銀河劇場で再演の幕を開けた。主演の小越勇輝は、人気ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンで4年間主人公・越前リョーマを演じ、卒業後、これが初の舞台となる。
物語は近未来が舞台。ロックバンド“サイケデリック・ペイン”のボーカル・詩音は、自らを天使だという謎の美女ソフィに「世界を救えるのはあなただけ。あなたが救世主です」と告げられる。天使と悪魔の戦いに巻き込まれる中、どこか孤独を抱えていた詩音は次第にソフィに惹かれていく。そんな詩音をバンドのギタリストであり幼なじみでもある魁人は心配して気にかけていたが、ついには詩音は彼女を守るためにバンドを抜けたいと言い出す。だがバンド自体も、天使と悪魔の争いに巻き込まれていき…。
なんといっても、眼目は劇中バンド“サイケデリック・ペイン”が奏でる生演奏だ。彼らが奏でる爆音のバンドサウンドは熱いパッションがみなぎっていて、聴いていても胸が熱くなる。魁人役の桜田通は見事なギターソロや弾き語りを聴かせ、ドラマー翔太役の汐崎アイルが鋭いリズムを刻み、ベースの準役の慎之助がリズムを支えれば、キーボード・麗次役の佐藤永典がバンド全体をしっかりと纏める。そして詩音役の小越がシャウトも高らかに、パワー全開で思いを歌に叩きつける。
そしてその音楽同様、フレッシュなキャスト陣の演技もまた熱い。詩音役の小越はどこかやんちゃで可愛らしいキャラクターでスター性を感じさせつつも、孤独を抱える表情なども印象的。また魁人役の桜田も小越同様、かつて『テニスの王子様』で越前リョーマ役を演じていたが、その小越と桜田、超ヒット作の看板を背負っていたふたりがさすがに人気バンドメンバーに相応しいカリスマ性をたたえていて、この物語を牽引していたのは間違いない。
タイトルのとおり、幻覚に襲われるような、奇妙な浮遊感のある異世界の物語だが、現実感が薄いからこそ登場人物の内側にあるセンシティブな思いがビビッドに伝わってくる。さらにロックサウンド、そしてロックを信じロックに情熱を傾ける若者たちの思いが物語の太い芯となり、普遍性のある熱い青春物語となった。単なるミュージカルではない“ロックオペラ”がふたたび、見事に息付いていた。
東京公演は4月12日(日)まで同劇場にて。その後4月17日(金)から19日(日)に福岡・キャナルシティ劇場、4月30日(木)から5月4日(月・祝)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演される。チケットは発売中。
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